相田のマネージャー取材
今日も相田彦一の姉、相田弥生が海南大附属に取材に訪れていたが、いつもとは違っていて牧もちらちら視線を向けて気にしていた。
体育館の隅で話をしていて、皆練習に励みつつも耳はそちらを向いてしまう。
「私を特集ですか……?」
「そうなの。我ながら良い案だと思っているのよ。きっかけは、ページに空きができちゃうからってやつで申し訳ないんだけど。」
「私なんかより、その、選手の皆を……。」
「そういうところが良いのよ!謙虚な縁の下の力持ち!あなたの評判、良いものしか聞かないのよ。うん。見た目もすごく良いからページが映えるわ。」
「え、ええ……!」
パシャ、と一枚写真を取られる。すぐに確認し、うん、可愛い、と満足そうに頷いた。
「企画に目を通してくれないかしら?」
荷物から数枚の紙を取り出し、に渡す。
箇条書きで少々難しい言葉もあったが、弥生は言葉で簡単に説明してくれた。
「アイドルみたいに持ち上げるつもりはないわ。うちの雑誌の読者は熱心なバスケファンが多いから。むしろ見た目が華やかだから本当にいつも通りの姿でいいの。写真を数枚と、一言くれれば、あとは私が記事にするわ。」
「は、華やか……?」
「ええ。ええと、シャツはそれでいいわね。あと下なんだけど露出できるかしら?ほら、湘北のマネージャーみたいにスパッツでもいいわね。夏だし。」
何かを想像した清田がパスミスをする。
「あと髪を結んで……あら?胸が大きいのね?アクティブな写真だと揺れちゃうかしら。ちょっと触っていい?」
「あ、は、はい。どうぞ。」
勢いよく目を逸らした武藤が床にバコオオオオンとボールを叩きつけた。
「ちょっとこれは隠したほうが爽やかね……髪とあとメイクを軽く、うちのスタッフがやらせてもらって……。選手にボール出ししてるところ……ううん、テーピングしてるところでもいいかしら。どっちもいいわね……。」
「あ、あの、待ってください。練習中に取材が入るなら、監督と牧さんに話を通していただいてからじゃないと!私が練習の邪魔になったらそれは嫌です!」
「大丈夫。そんなに引きの写真じゃないから、練習終わりに選手1人くらい借りて撮ればいいわ。」
「そうなんですか……。」
あまり目立つことはしたくなくて、どう断ろうか悩んでいたのだが、企画書の言葉に視線が向いてしまう。
バスケ部マネージャーが少ない現状の中で、輝いている子にスポットを当てて認知を広めようという目的らしい。
自分が雑誌に載ることで、私もマネージャーをしたい、と思ってくれる子が現れたりするのだろうか。
「えっと……。」
「あと、制服と私服で一枚ずつ。お友達とは何してる?私としては、何か、スイーツ食べてるシーンなんかあったらいいわねえ。」
「甘いものは好きです。ビタミンとれる果物系とかよく食べます。フルーツタルトとか、ベリーいっぱいのパンケーキとか。」
「いいわね!うんうん。フォークを可愛く咥えてるシーンとかいいなあ!」
神がその場でうずくまって顔を手で隠してしまった。
「プライベートは普通の女子高生で、甘いものも大好き。うん。その方向でいきましょ!強豪校で選手の体調、怪我、コンディション、運営のサポートをこなして、選手の信頼も厚くて、ジャージから着替えれば普通の女子高生……あ、恋は?彼氏か好きな人は?」
「え、あ、う、お、あ、え!?そ、そんなことまで……!?」
「そうそう!恋もおしゃれも満喫してたら凄いじゃない!私だったら憧れちゃうわ!!」
「すみません。」
盛り上がっていた弥生の肩に手を置かれて振り返ると、牧が眉根を寄せていた。
「あ、あの。をあんまり大人の事情に当てはめて好き放題するのはちょっと……。」
「あら!そんなつもりはないのよ!高校二年生なら彼氏いるのも普通でしょ?」
「い、いないんですううううう!!」
「そうなの?バスケ一筋、でも自分磨きも怠らない彼氏募集中の女の子でもまあいいか……。」
「募集もしてませんんんん!」
「えー!?どうして!?私が高校生の頃なんて……あ、いえ、なんでもないわ……。」
弥生がこほん、と恥ずかしそうに咳払いをする。
「ごめんね牧くん。えっと、これ見てもらっていい?」
鞄から取り出した雑誌のページを開いて、牧に見せる。
「この記事と同じサイズなの。ちゃんと話してると凄くイメージ湧いてきて。もちろんバスケ部での活動がほとんどで、あと数行、高校生活楽しんでる様子もあればなって……。強豪校のマネは勉強とバスケばかりで余裕無いって印象も悪いでしょ。」
「でもは彼氏いないと言ってるんで、友人との写真だけでなんとか……。」
じっと弥生が牧の顔を見る。
「!!なんですか?」
「……ううん。牧くんとの写真じゃ、プライベートもバスケ一筋って感じでファッション性が無いわよねえ。」
「……。」
牧が地味に傷つく。 一緒にいても彼氏には見えないと言われたような気分だった。
「ちょ、ちょっと待ってください!そもそも俺は反対です!さんは素晴らしいマネっすけど雑誌に載ったら彼氏募集なんてしなくても会いに海南に来る奴が現れたり、最悪ストーカー被害に遭ったりするかもしれないですよ!」
「清田君考えすぎだよ……。」
「考えすぎじゃないですよ!!」
清田が駆け寄ってきて、必死に意見を言う。 コートではうずくまっていた神がゆらりと立ち上がる。
「その雑誌……。」
「え?」
「秋田でも発売します?」
「え、ええ。書店取り扱いあるわよ。」
「わかりました。」
神もすたすたとの元に寄る。
「神君?」
「俺が、彼氏役になります。」
にこお、と爽やかに神が笑って、の肩を抱く。
「神さん!?」
神も一緒に反対派になってくれるんじゃないかと考えていた清田は驚愕した。
「彼氏がいると分かれば変な気起こす奴いなくなるんじゃないかな。後ろ姿の写真でもいいんじゃないですか?男は誰か分からない感じのほうが。」
「ええ……そうね。ちゃんがちょっと横向いてくれて、本人だって分かれば……。」
秋田での発売を確認したとか絶対沢北への挑発じゃねえかとその場の選手全員が考えていた。
「神君とちゃんかあ……。」
また写真を取って、写りを確認する。
「え、だめですか?」
「本当の彼氏彼女なら雰囲気が出るからいいのよ。どんな人でも。でもいなくて選べるんなら……神君は身長差がね~。」
「身長差……!!!」
「歩いているところがいいなあと思って。個人的な理想だけど、ちゃんが背伸びしたらキスできるくらいの身長差だと可愛いかなあって。」
「さんが背伸びしてキスしてくれる!?」
「清田落ち着け。」
どう考えても無理な180cm後半の身長組は項垂れた。
「清田君……。」
「は、はい。」
弥生が清田をじっと見つめる。清田は姿勢を正して、大人しくしていた。
「髪……ウィッグで短くしてもいいかしら。バスケ部員とできてるって噂が出ても嫌よね。一般的な高校生の髪型にして、一緒にいる人は彼氏かそれとも……?って濁したほうが可愛いかしら。」
「え、お、俺が彼氏かもしれない役ですか!」
驚きながらも顔を赤くして、清田は拳を握った。
「……ちょっと……。俺はどうだ?俺の身長だと背伸びしてキスは出来るのか出来ないのか?」
「ちょっと待ってくださいね、うーん、うーん。」
牧とは会話の輪から外れ、試していた。思いっきり背伸びをしても届かないので爪先立ちになるとフラフラしてしまって牧の肩に手を置く。
「届きません~。」
「170cmくらいの方が良さそうだな。でも実際そういう場面になったら俺がちょっと屈めばキスできる。身長差は問題ない。」
「そこの二人は何をのんびり実験してるんですかね!?」
牧に続いて傷心の神がツッコミを入れた。 そしてそのアングルいいな代わってください!!!!と考えていた。
「あ、そうか。藤真くんなら髪弄らなくてもいいわね。」
弥生の思いつきに皆がピタリと止まる。
「はい?」
「ごめんね清田君。撮影日そんなにスタッフいないの。ヘアメイクはちゃんだけだと助かるのよね~。」
「え、ちょ、ふ、藤真さん?がさんの彼氏役とか……。」
美男美女すぎて洒落にならない。もしもと藤真が腕を組んだり手を繋いで歩いてるシーンなんかされたら泣きたくなりそうだ。
「藤真君は写真映りも凄くいいし……どんどんイメージ湧いてきた!ちゃん!あとは部活を通して学んだことでも考えてくれるかしら!」
「は、はい!!」
「じゃあ男の手配は私に任せて!!!」
「弥生さん言い方!!!!!」
満面の笑みを浮かべて弥生が体育館から去っていく。 ところではまだこの企画自体のOKを出していないのだが、こうなっては断りづらい。
「あの。」
清田が肩を震わせる。
「お、俺、没ってことっすか……?」
清田も傷心組の仲間入りとなった。
「ふっ……。」
撮影当日、海南大附属の体育館で藤真がご機嫌にしていた。
「ちゃんの彼氏役にふさわし過ぎて抜擢された藤真だけどなにか質問ある?」
「そんな5chのスレタイみたいなセリフを!!!!」
「調子に乗ってるな~。」
「凄く腹立ちますね藤真さん。」
清田、牧、神が突っ込む姿を花形が申し訳なさそうに見ていた。
「俺は藤真のマネージャー役で来たのでよろしく。」
「そういうのいらないっていったろ花形ー!!」
「いや、お前は要らなくても海南の皆さんには要るかなと思って……。」
「さすが花形良い判断だ。」
頬を膨らませる藤真だったが、花形は冷静だった。 さっそく海南の選手に絡む藤真を引きはがす。
「そんで肝心のちゃんは?」
「準備中だ。お前の集合時間17時じゃなかったか?」
「いや~。せっかくだから撮影風景見たいなって思って。最初はマネの写真でしょ?」
現在15時で、本日の海南の練習が終わったところだった。
「そうそう清田がパスもらう役で~。」
「神さんがテーピング巻いてもらう役っす!!」
神が清田を指さし、清田は手のひらを上に向けて神を示す。
「どっちが採用されるかわかんないけど。」
「その辺は弥生さんに任せて、俺はしっかりやるだけっす!」
にこにこ笑って、ね~、と顔を見合わせる神と清田に競争心などは見受けられなかった。
「お待たせお待たせ~。準備してくれてありがと。」
弥生が体育館に入ってきて、牧たちに歩み寄る。
「藤真君もごめんね。交通費も請求してね。」
「いえいえ。ありがとうございます。俺どこまでやればいいんでしょ?」
「どこまで……?」
「ちゃん相手ならNG無いっす。手繋ぎ腕組み壁ドン床ドンキスまでなんでもしますよ。」
「藤真ァァァァァァァ!!!!」
花形が藤真の口を塞いで体育館の隅に連れて行く。そこで説教が始まった。
「き、気合十分ね、藤真君。」
「気合と受け取って下さってありがとうございます。」
一応ライバルの牧も藤真のフォローを入れたかったがその程度の言葉しか出てこなかった。
「あ。」
清田が体育館に入ってくるを視界に入れた。白いシャツにお尻を隠す程度の短いハーフパンツで、太ももの半分までをスパッツで肌を隠しているだけで、いつもより脚を露出して恥ずかしそうにしていた。
「ダメっす弥生さん!!!!」
「あ、こりゃダメだ。」
「うわあああああダメだ。これダメだ。うちはNGです。」
「総ダメ出し!!!!????」
顔を真っ赤にする清田と、照れたような表情の牧と、視線をそらして指で×を作る神の真意は分かった。
「可愛いに色気も足しちゃダメっす!!!だめだストーカー被害に遭う!!!」
「大丈夫よお。今ちゃんが恥ずかしがってるからでしょ?動いたらスポーティーに見えます。」
が弥生に小走りで駆け寄ってくる。
「弥生さん。あの、失礼かなと思って聞けなかったんですけど、髪の毛結構ばらばらしてません?」
後ろでひとつに縛ってはいるが、少しの束が首元に出てきてしまっている。
「こうしてもらったの。ちょっとスプレーで水吹き掛けて、汗が滲んでるみたいにするから。」
「あ、活発に動いてるって演出なんですね。」
「うん。解れた髪が汗で張り付いてる感じ良いと思って「NG。」
牧が弥生の言葉を遮った。
「まーまーまー。牧君ちょっといいかしら~?」
弥生が牧の背を押して体育館の隅に寄る。
「ダメだ牧さん大人の女性に言いくるめられる!!!」
「そんなうちで一番発言権あるの牧さんなのに!!!!」
「こんちわ~。ね~ちゃ~ん。おるか~?」
突然彦一の声がして、体育館入口に視線を向ける。 弥生も驚いた顔をしたが、すぐにきゃああと嬉しそうな声を上げる。
仙道も一緒だからだった。
「こんちは。撮影してるって彦一に聞いて。」
「見学か?仙道。」
靴を脱いで、すたすたと弥生の元へ来る。
牧へぺこりとあいさつした後、屈んで弥生に話しかける。
「が男と一緒にいるシーンがあるんでしょ?俺じゃだめかな?」
「仙道さん。身長差がある人は遠慮してるみたいですよ。」
神が仙道に伝えるも、仙道は引き下がらない。
「そうじゃなくって、趣旨変えるの。弥生さんよく俺の取材してくれて結構雑誌にお世話になってるから……。俺とも仲良く出来るマネージャーって方が、自分で言うのもあれだけど価値上がらない?」
「仙道君のオフショットくれるの!!!!!?????」
「弥生さん……。」
完全に瞳がハートマークの弥生に牧が汗をかく。
「価値だ?だったら俺も名前出しちゃってくださいよ。翔陽キャプテン兼監督の俺とも対等に話ができる知性って書けますよ。」
負けじと藤真も話に加わる。
「花形さんこんにちは~。」
「こんにちは。藤真がいつもお世話になってます。」
「いえいえこちらのほうが。」
と花形はのんびりあいさつを交わした。
「価値……っつったら沢北だろ……。」
「え?」
牧のつぶやきに弥生が食いつく。
「沢北くんって山王の!?」
「ええ。と仲良いんで。」
「うそおおおおお!!!それ欲しい!!欲しいけどその交通費は多分無理だわああああ!!!」
弥生が体育館の壁をバンバン叩いて悔しそうにする。
しかしこの豪華なメンツで誰とどう撮ればいいか悩んでしまう。
「おうい、。」
「あれ?三井さん?」
「アヤコから聞いて見に来てやったぞ~。頑張れよ。」
「三井さん!!!!」
「ん!?」
部活終わりのジャージ姿で海南の体育館を覗き込む三井に清田が歓喜の声を上げた。
容赦なくNGを言えそうな保護者来た!!と喜ぶ。
「三井さんお願いしますさんのあの恰好やばいっすよ!色気が!NGだって言ってやってください必殺幼馴染NG!!」
「ハハハ。あいつガキくせえからあのくらいで丁度いいんじゃねえか?」
「その眼は節穴か!!あの恰好が雑誌に載るんですよ!?」
ふ、節穴だと……?と睨みつけてくる三井をかまわずぐいぐい引っ張る。
「三井さ~ん。恥ずかしいんだ……どうしよう。いまいちいつもの練習前の気合が入らない。」
「いいんじゃねえか?程々でよ。気楽にしとけよ。」
の前に来た三井は、しょぼんと俯くの頭を優しく撫でる。
こういうときは優しい言葉をくれるのが嬉しくて、三井を笑顔で見上げた。
「ああああああ!!その顔もいい!!」
「え!?」
「なんだ?」
弥生がこちらを向いて大声で叫ぶ。
「その甘えた表情!!そっか!三井君は幼馴染なんだっけ!!頼れるお兄ちゃんと妹みたいなのもいいわねええええ!!小さいころから一緒にバスケをやってた二人とか微笑ましい!」
「弥生さん。キリがない。」
「そうね!!まず練習風景から撮っちゃいましょ!!」
がボール籠の横に立ち、清田はセンターラインに立った。
胸元に水を吹きかけ、こめかみからも水を垂らす。
髪は勝手に張り付いてくれたが、牧と神は目をそらし、藤真と仙道の視線は積極的に胸元に行ってて、三井は何も考えてないのか頑張れよーとボールを弄りながら応援している。
「最初普通にやって貰えるかしら?」
「ウーイ。」
「清田君、ゴール下ねー。」
「行きますよー。」
いつも通りのスピードで走り込み、がワンバウンドパスを出す。
キャッチして、レイアップシュートを決める。
「速いわねー。ちょっと遅くできる?」
「え、遅く?や、やってみます。」
戻ってまた走りこむ。 には片手のパスで、もう一方の手にもボールを持つよう指示がきた。
「清田くーん。」
「はーい。」
少し気を抜いた掛け声で、ランニング程度のスピードで入り込み、もそれに合わせてパスをする。
パシャパシャパシャパシャと連写の音に少しビクリと驚いてしまったが、清田はシュートを決めた。
「うん……いいかな?念のためもう一回いい?」
「はい。」
「同じスピードっすか?」
また戻って、清田が走りこむ。さっきと同じタイミングでボールを出そうとが腕を上げ、清田もパスを貰う体勢になった瞬間弥生が叫ぶ。
「止まってーーーーー!!」
「「!!」」
先に言って!と思いつつ、動きを止める。
しかし耐えきれず清田は数歩歩いてしまったし、もボールを落としてしまった。
「すみません!」
「大丈夫よー!良い瞬間撮れたわ!」
「本当ですか?」
「ええ。次じゃあ神君。」
「はーい。」
ユニフォーム姿でベンチに座った神が靴下を脱いで足を出して準備万端でいた。
清田がボールを片付け始めて、はごめんね、と一声かけてから神の元へ向かった。
タオルで首元の水を拭いて、軽く髪を整える。
「えっと、足首の捻挫ね。」
「アンダーラップは俺が巻いておいた。」
「ありがとうございます牧さん……!」
昨日の夜、練習終わりに緊張してしてしまって牧がテーピング練習に付き合ってくれた。
この調子でやれば大丈夫だと言ってくれたのを思い出し、牧の顔を見ると安心した。
「一番、巻いてます!って感じのとこで止まって欲しいなー。」
「巻いてます!ですか……。フィギュアエイトですよね。」
「さんせーい。」
藤真が同意してくれて、も安心する。
「彦一、見てな。」
「はい仙道さん!」
「とりあえず今は綺麗に巻けるようにでいいんだけど、その先は目標にすること。」
「はい!!」
「仙道君緊張する!!!!!」
「はいつも通りでいいんだよ~。」
彦一はやはりノートとペンを持って、の手つきをじっと見る。
仙道もカメラの邪魔にならない位置で観察していた。
「分かる彦一?教科書通りじゃないでしょ?ちゃんと関節の位置を確認して、制御する走行で巻く。フィーリングじゃだめ。俺がやってほしいのはあれ。」
「はい!!」
「彦一はマネじゃないけど、覚えておいた方がいい。ほら、しかも速いし皺も寄らない。」
「はい!!さん凄い!!」
「緊張する!!!!!!!!!!!」
「大丈夫だ。今はゆっくりでいいし。」
「はい牧さん!!!」
走行を一度チェックして、弥生に声をかける。 すでに何枚もパシャパシャと撮られていたが、要望はこれからだ。
「弥生さん。こんな感じでどうでしょう?」
「バッチリ!!」
そしてパシャパシャとまた撮られる。
「はい!!オッケー!!」
「ふあああ一番緊張したあああ!!神君今取るね……。」
「俺がやるよ。」
テーピングハサミを取り出して切ろうと思ったら、牧に手ごと握られる。
の顔が赤くなる。
「次着替えるんだろ?」
「ありがとうございます……。」
「牧さーん。乱暴にしないでくださいよ?」
「するか馬鹿。このくらい俺にも出来る。」
「じゃあちゃんはこっちに。」
弥生に連れられてまた更衣室へ行ってしまう。
牧も器用にハサミを使い、テーピングを切る。
終わると、あとは帰るだけの神は置いておいた私服に着替え始める。
清田も着替えて戻ってきていた。
「そうですね。あんまり意識してなかったけどテーピング上手いですよね。」
「意識してないの!?えー羨ましい。ねえ藤真さん。」
牧に話しかけた言葉に、仙道が羨ましそうに反応する。
「確かに、ちゃんいたら安心感が違うかも。」
「も結構やるんだな。」
「三井はあんまりちゃんを子供の時と同じに見てると痛い目みるぞ?」
「なんだよ藤真……。」
にやっと意味深に藤真に笑みを向けられて、三井がたじろぐ。
「海南も。ちゃんがいて当然と思ってたら痛い目見るかもしれないな?」
花形も牧に視線を向けながら笑う。
「いて当然なんて思ってませんよ!!」
清田が慌ててまくし立てる。
「感謝してますよ。」
神は余裕で笑う。
「が……いなくなったら嫌だな……。」
牧は少し落ち込んだ顔をして俯いた。
「三者三様すぎるな。」
藤真がくすくすと笑う。 その姿に皆が違和感を感じる。
「あれ、藤真さんイケメンスイッチ入ってない?」
仙道が首をかしげて藤真に問う。
「当然。これから俺はちゃんの彼氏撮影だ邪魔するな。三井のことは、お兄さん、と呼べばいいのか?」
「お断りだ。」
目を細めて三井が即答した。
「でも仙道とのシーンかも知れないんだろ?あの編集の人仙道好きだからなあ。」
とりあえず交通費は請求していいんだよな……と考えつつ、一応確認しようと思う真面目な花形マネージャーだった。
「じゃあ競うか?仙道。より良い写真が撮れたほうが採用だ!!」
「まじっすか。負けないですよ。」
「こらこら、勝手に……。」
「おっと?すでに没になってる海南三人は下がっていてもらおうか?」
制止しようとした牧はあの傷心を思い出して黙ってしまった。 神と清田に背中をぽんぽん叩かれ慰められる。
「なんか気に食わね。俺も候補だったよな?」
三井も藤真と仙道の対決に加わろうと立ち上がって、二人を睨み付ける。
その姿に待ってましたと清田が喜んだ。
「何で清田は三井応援してるんだ?」
「三井さんはさんに対して漫画かな?と思うほどのツンデレなんで、何だかんだでさんを守ってくれると思うんで!!あの三人なら俺は三井さんっス!!」
「ああーなるほど。確かにわかりやすいよね。」
「か、勘違いしないでよね!!お前を守るためとかそんなんじゃないんだからね!!!って言いそうっス。」
「いわねーよそして何で女口調なんだよ黙れ海南!!!!」
恥ずかしそうにしながら三井が怒鳴った。
「はいはーい。皆さん、移動するわよ~。」
戻ってきた弥生がパンパンと手を叩いて皆を呼ぶ。
その後方にいるの表情はちょっと嬉しそうだった。
「それ私服か?」
いつも活発なにはあまりイメージにないロングスカートとヒールのあるパンプス、滑らかな生地のブラウスを着ていて、牧が疑問に感じる。
「あ、あの。私も私服では来たんですけど、弥生さんが一応持ってきてくれたものが、可愛くて……。着てみたかったんで借りたんですけど……似合わないですかね。」
「天使かと思った。」
「そのままデート行こう。」
「うん!?」
牧に問いかけたつもりだったが、ずいっと藤真と仙道が牧を押しのけての前に来る。
うおおおうおおお三井さん頑張ってえ頑張ってえと背後でつぶやく清田がうざくて三井はイラッとしつつもに寄る。
は、三井は絶対笑うと思ったのか警戒して一歩後退りした。
「……。」
「だ、黙ったまんまはやめてくださいよお!!」
「ええと、弥生……さん?」
「なあに?三井君。」
「この服……買い取りできますか?」
「!!」
「いいわよ?」
「……じゃあ、着て帰れ。。」
そう言って、ぷい、と背を向けてしまった。
「さすが三井さん分かりにくい!!!!プレゼントしちゃうってことっすかあああ!?また俺の前で着てくれってことですかあああ!?いやあ素直じゃない!!」
「やかましい!!!!!!!!!」
清田の声をうざがりつつも顔が赤い。 弥生に金額をこっそり聞こうと近づくと、半額でいいわよ、と言われた。
「さて、天気がいいから公園で撮るわよ。それで構図よねえ……。」
「弥生さん、俺も仙道も、三井もかな?撮ってくれていいですよ。そんで、いいと思った方使ってください。」
「いいの?」
「ええ。」
藤真があくまでも真摯に弥生に話しかける。 仙道も笑顔だったが、負けん、と燃やす闘争心はめらめらと燃えていた。 公園に移動し、まず藤真がの横に立つ。
「二人は並木道散歩する感じで!」
「はーい。藤真さんよろしくお願いします。」
「こちらこそ。」
彼氏か友達かと濁す記事のために触れ合いは無しになって藤真は残念がる。 一緒に並んで歩きながら、背後でパシャと鳴るシャッター音を聞く。
「デートにさ、店とか遊園地とかに行くのも良いけど、こうしてまったりするのもいいよね。」
「そうですね~。ゆっくりお話しするのもいいですね。」
「一人だとこういう暖かい日は昼寝したくなっちゃうけど……。」
「お昼寝ですか?」
「ちゃんと一緒に来れたら癒されてぐっすり眠りそう。」
じゃあ私膝枕してあげますね、って言ってくれないかな、先輩だしまだそこまで俺に親しみ持ってはくれてないかなあと考えつつ返事を待つ。
「藤真さんの……お昼寝……。」
さぞ端正な顔立ちでお休みになられるのだろうなあ、もしファンの子に見つかったら襲われてしまうかもしれない……とは考える。
「その時は私が藤真さんを守りますね。」
「なんか予想外にかっこいい言葉来た!!!」
「撮れたわよ~はい移動移動。」
「ま、まだちゃんとらぶらぶしてない!!」
「そういう趣旨じゃない。」
花形が藤真の襟首を掴んで、に寄り添おうとするのを阻止する。 付き添いで来てくれて花形さん本当にありがとう……と神は思った。
「仙道君とは座ってお話してる感じにしましょうか。あら、噴水があるじゃない。あそこにしましょう。」
「行こう、。」
「はーい。」
噴水のへりに座って、仙道と向かい合う。
「何話そう?」
「改まると困っちゃうね。」
「じゃあ、じゃあ、仙道君がトレーニングで一番気にしてることとか教えて!」
「気にしてること?いや俺は監督の指示どおりやってるだけだけど。」
「ええ……それであんなにずば抜けたプレイできるの?やっぱり才能なの?」
さっきの藤真は二人の背中だけの写真や、のアップを取ったり、引きで藤真と一緒だと分かるようなショットも撮っていたが、今度は弥生は仙道のソロまで撮り始めてギャラリーは汗をかく。 個人用だろうか。 しかし仙道は気にした様子もなくに話しかけ、も自然な笑顔だった。
「良い写真が!!!!撮れたわ!!!!!」
興奮した様子に、記事のですよね?仙道のソロじゃないですよね?と疑問に思ったが口に出せる人はいなかった。
「ラストの俺はどうしたらいいんだ?」
「三井さんはこれですー!」
「ん?」
彦一にバスケットボールを渡される。
「あっちにゴールあるんで、三井さんとさんがバスケで軽く遊んでる感じがいいそうです!」
「軽く……1on1か。」
「なんかガチでやり始めそうな気迫がありますね!?いえいえ!えっと、三井さんが軽く練習してるところをさんが応援してるとか、ボール拾いしてるとか!!」
「わかったよ。おい来い。」
「はーい。ありがとう仙道く……。」
仙道にお礼を言って三井のもとへ行こうとすると、腕をがしっと掴まれた。
「え?」
「離れたくないけど……。お仕事だもんね。頑張ってね。」
「え。」
さらっと言われたが、ばっちり耳には届いてる。 寂しそうな顔をする仙道が大型犬のように見えてキュンとしてしまったが、以上に弥生が頭を抱える。
「せ、仙道君にそんなこと言われたら早く帰ってきちゃう……!」
「弥生さん落ち着いて。」
「ちゃんありがとう自分に置き換えたら肌潤ったわ棚ぼたラッキーってやつね。さあ次行きましょう!!」
「は、はい……。」
促されて、今度は三井の近くに寄る。 ドリブルしながらこちらを見て待っていた。
「なんか一緒にバスケで遊んでる感じだと。」
「私ディフェンスやったほうがいいかな?」
「おいおい。せっかく良い服着てるんだからそういうのはやめとけよ。適当にボール拾いしてろ。」
「はあい。」
ゴール下に移動して、三井がジャンプシュートを放ったのを目で追う。
シュッと綺麗にゴールに入り、ワンバウンドしたあとでキャッチして三井にパスをする。
「懐かしいな。」
「うん。よくやったね。」
次にドリブルでゴール下まで来てシュートを放ち、また入れる。 がボールを取ったあと、距離が近いので手渡ししようかなと三井に駆け寄った際に小石に躓いた。
「あ。」
「!!」
咄嗟に三井が手を伸ばす。 転ばないように体を支えて、なんとか踏みとどまった。
「ありがとう三井さん。」
「……。」
「?」
お腹のところに腕を回したつもりだった。 前かがみだったが上体を起こすと、重力で胸が下がる。 三井の腕に、柔らかい胸の感触が乗ってきて、黙ってしまった。
「さ、さすが三井さんだラッキースケベまで体得している!!」
「!!!!!う、うるせえぞお前!!!!」
すぐに察した清田が大声を上げた。 こっちがバレまいとしていたところだったのに。
「ラッキースケベとはなんだ?清田。」
「幼馴染とか近所のお姉さんと、あまりモテない特徴のない男の子主人公にありがちですね。」
「……す、すまん。俺の理解力がないのだろうか?」
「牧さんは悪くないです。」
眉根を寄せて困ってしまった牧のフォローは神が入れる。
「ずりいな三井。俺本当に歩いてただけなんだぞ?」
藤真が唇を尖らせて三井とに寄る。 花形もそれについていった。
「三井さんはとりあえずから手を離そ?」
仙道も駆け寄っていき、それを見て心配になった海南の三人も歩き出す。
「ああ~まだ終わったかわからへんのに~!姉ちゃん、撮れたか?」
「大丈夫、撮れた。撮れたけど……。」
ゴールの下で、牧、神、清田、藤真、花形、三井、仙道が仲が良さそうに話したり絡んだりしている。
それを傍でが笑って見ている。 弥生はそのシーンにカメラを向ける。
「やっぱり変に飾るより、こういうのがちゃんらしいのかな。」
パシャリと、一枚撮ると、弥生は満足そうに笑った。
公園での撮影が終わると、藤真は花形に連れられ、仙道は彦一に連れられて帰っていった。
三井は友人から呼び出しが来たといって、待ち合わせ場所に向かった。
神と清田は撮影で使ったボールが海南のものだったので、それを戻しに体育館へ戻っていった。
牧とが公園の出口で向き合う。
「、お疲れ。」
「はい!!牧さん!!」
「慣れないことをすると疲れるだろう。明日の朝練は休んでいいぞ。」
「ええ!!」
「むしろ休め。来たら追い返す。」
「ええ!!!!!!思った以上に酷い!!!!!」
「それで、今日思ったことを言わせてもらう。」
「は、はい!!」
まるで試合後の反省会のような牧の態度に、は緊張してしまう。
「まず最初の清田との写真。」
「はい!」
「タイミングをしっかり意識してしていて、しなやかな動きが出来ていた。良かったぞ。」
「ありがとうございます!」
「神との写真は、藤真と仙道の反応からも分かっただろうが、文句ない。むしろ頻度の高い傷害の応急処置ならあのくらい当然と思っていて欲しい。」
「もちろんです!」
「藤真、仙道、三井との写真は……。」
「はい!」
「……あまり見慣れない服で違和感があったが、確かに、可愛いと思った。」
「お、ぐ、おお、あ、ありがとうございます!!!!」
は照れるのを我慢しながら勢いよく頭を下げてお礼を言う。
「よし!以上だ!!」
「はい!!」
牧がそのあとを言おうと口を開けるが、言葉が出てこない。
も牧の顔を覗き込んで、寂しそうな顔をする。
「……か、解散!……ですか?」
「…………。」
牧はふっと優しく笑った。
「一緒に帰るか。」
「はい!!!!!」
牧との写真だとただチームメイトと一緒にいるだけになっちゃうから面白みがないのかなと察して何も言わなかったが、せっかく載るなら牧との写真も入れて欲しかった。
その我儘を我慢していた反動か、一緒に帰れると思った瞬間気が緩んで牧の腕にしがみついてしまった。
「おいおいどうした?」
「牧さんとあまり喋れなかったですし……牧さんに優しい言葉かけていただくと一番緊張溶けるのに……。」
「はは。そうだったのか。いや、邪魔しちゃ悪いかなと思ってそんなに話しかけなかったんだがな。逆だったか。」
「……でもいいです。いてくれるだけで嬉しかったので。」
「さっさと帰るわけないだろう。せっかくお前の頑張りが雑誌に載るっていうのに。」
「牧さん……!」
「結構、喜んでるよ。これでも。」
牧が歩き出すのに合わせても動く。
この先のショーウィンドウの前を通るとき、二人の並んでる姿を見てみよう。
弥生さんには却下されてしまったけど、彼氏彼女に見えなくはないんじゃないかな。
そうお互いが考えて、ウィンドウ越しに目が合ってしまうことになるとはこのとき予想出来なかった。
雑誌の発売日前日、藤真の元に雑誌が送られてきた。
学校に着くと、花形の机に雑誌をバサッと置いた。
「タダでくれたってことは協力ありがとうってことかね?俺の写真採用ってわけだ。」
「どきどきしてたくせに自信満々でしたって態度だな。」
「だ、誰がだよ!!」
拗ねた顔をするも雑誌を持ってきて一切開かない藤真はやはりこういうのが苦手なのだろう。
弥生がお願いに来た時、よく頷いたものだなあと花形は笑った。
俺が断ったら別の奴に頼みに行くのだろうかと考えてしまって、が変な奴と組まされるくらいなら俺が、とでも、なんだかんだで優しい藤真は思ったのだろう。
「見ていいのか?」
「おう。」
新品同然で、藤真は開いて確認したのか怪しくなる。
「あれ。」
「ん?どうした?」
昨日、花形の自宅の机の上に郵便物があったのだが、心当たりがないし疲れていたから開封せずにそのままだった。
そうか、俺のところにもこの雑誌が届いてたのか、と察した。
「俺も出てる。」
「は!?」
驚いた藤真に雑誌のページを開いて見せる。
清田へパスをするシーン。 神にテーピングを巻くシーン。 別日に撮ったのだろう、友人と一緒にお出かけしているシーンに
「これ、公園のとこで三井に寄ってったときの写真じゃねえか。」
「ちゃんが素で笑ってて良いな。」
騒いでる皆と、それを楽しそうに笑いながらが見ている写真が載っていた。
チームの垣根を越えて交流が出来る彼女の人柄も魅力の一つ、という文面と一緒だった。
「なんだよ~!!仙道に俺の勝ちって連絡するところだったのによ……。」
「藤真もまあ載ってるじゃないか。ちょうど優しい笑顔のところで良かったな。」
「仙道だっていつものぽやんとした表情の時で良かったな!!ちゃんにでれでれした顔でも出してりゃファン減ったかもしれないのによ。」
つまらなそうな顔をしながらも、花形から雑誌を受け取って、記事を凝視する。
「……うん。雑誌に載るのも、悪くないかな……。」
「弥生さん聞いたら喜ぶな。」
「わざわざは言わない。向こうから頭下げてきたときな。その為に実績もっと残さねえとなあ。」
「がんばります監督。」
「おう頑張れよ花形。」
楽しそうに笑いあったあと、藤真が自分の席に戻ろうと立ち上がった。
「ちゃんもこの写真なら喜んでそうだな。」
「花形もそう思う~?俺もそう思う。」
肩ごしに振り返ってニッと笑いながら、藤真は去っていった。
「えへへへえへへへへ。」
「きも!!!!きも!!!!!」
「うえへへへへへ。」
友人にきもいきもい言われながらもはにやけた顔を戻せない。
「雑誌見たの~。私、牧さんの隣にいる写真だよお~。」
「はあ……よかったですねえ……。」
「よかったです!!!!!!!!」
皆が映る写真は、牧の横で自分が笑っている写真だった。
「みんな写ってる写真で嬉しいな。最初からこうすれば良かったのに。」
「大人の企画だっていろいろ方向修正あるんでしょ。」
「そうだね。良いところ見逃さない弥生さん流石だな~。」
帰ったらノートにスクラップしよう、と考えたところで携帯が鳴る。
「あれ。」
携帯に通知が来る。確認すると、沢北からの連絡だった。
『雑誌に!!さんが載ってた!!事前に教えてくださいよおおおお!!!』
と、慌てたメッセージだった。
すみません、大したことじゃないかもと思って……と返信すると、立て続けに連絡が来る。
『とりあえず3冊買いますね!!』
『いや何⁉深津さんや河田さんに教えようとしたらもう買って読んでたんですけど!?びっくりした!』
『あと親父にも買って布教するように言っておきます!!』
『え、これほんとに私服ですか!?凄い可愛いじゃないですか!!』
「……。」
電話して、とりあえず落ち着いて、と一言言おうかなあと悩み始める。
そしてまた連絡が来る。
『でも私服でも、さんは海南の人って分かりますね。チームが大好きなんだな。自然と牧さんたちに寄っちゃってるのが分かりますもん。』
「!!」
嬉しい文面に一瞬目を見開いたあと、またにやけてしまう。
だめだ、今日はもうずっとこの顔かもしれない。
「へへ~。」
「いつまでにやけ顔⁉」