21.海南vs湘北



と電話してから練習終わりまでずっとご機嫌だった沢北を夕食終わりに部屋に呼ぶ。
河田はストレッチポールに寝転んで肩回りを伸ばし、深津はベッドに足を投げ出す。
沢北は椅子に座って二人から投げられた質問をオウム返しした。

さんのどこが好きか?」
「見た目だけかと思ってたんだピョン。」
「いや、見た目だけでこんなにテンション上がってる可能性もある。」
「いや見た目も好きでしょ。可愛いでしょ。お二人も好きでしょ?」

沢北に指をさされ、深津と河田は視線を逸らす。

「ほらね。」
「話を逸らすなピョン。」
「そう言われると……。」

むしろ沢北はなんで見た目見た目言うんだろう、と不思議だった。

「聞こえませんでした?インターハイで馬鹿にしてる言葉。」
「ん?」
「女子マネが入ったからって、海南練習量減ったんじゃねえの?とか。」
「記憶がねえな……。」
「そう言われると思い出したピョン。くだらないこと言ってるって流したピョン。」

深津と河田は能力の高さを妬まれ暴力を受けたことがある沢北の過去を沢北の父親と監督から聞いている。
勝手な悪意の言動を聞き逃せなかったのかもしれないと察した。

「俺にはしっかり聞こえちゃって。それで視線が行って。凄い動いてたんですよね。」
「そうなのかピョン?」
「女の子が牧さん達ににこにこして、確かに緊張感無さそうに見えたのかもしれないですよ。でも監督の指示伝達だったし、控えの選手にだって声かけて、試合のない時間会場の隅で控えでもない選手のテーピングの世話までしてました。」

ちゃんと仕事してんじゃん。可愛い女の子いるからって嫉妬かよ、ダセえ、と思った。
それで終われなかった。
次の日も自然と目で追ってしまった。試合のない時はにこにこして、他校のチームの映像を真剣に、楽しそうに撮っていて、試合中は豹変するあの姿を。

「それで試合の間はびっくりするくらい真顔なんです。最初はなんで?って、それチーム的にいいのか?声出さなくていいのか?って思ってたんですけど……。まあ真顔でも可愛いからそれで許されてんのかと思ったんですけど……。」
「惚気挟んでくるな。」
「俺たちとの試合でもそうだったんですよ。何点開いても、負けても、変わらなかったんです。」

深津も河田も海南ベンチがどうだったかまでなんて覚えていないが、大体の対戦相手は必死に声を出す。
対山王とあっては、その声からは動揺や諦めを隠し切れない時も多くある。

「あ、あれってチームの中での自分の役割を徹底してるんだ、ってそこで分かって。」
「すげえ見てたんだな。」
「試合に集中してましたよ!」
「それに関しては何も言ってないピョン。」
「そういうのは今は良い。」

深津はプロテイン飲料を沢北に投げる。
あざす、と礼を言って頭を軽く下げた。
夕食ちょっと足りなかったかも、と思い、開封して飲み始める。

「なんかすげえなって思って。俺にとっては興味持たない方が不思議なくらい。」
「……それ先に言えよ。」
「え?」
「だったら別に邪魔しなかったぜ俺は……。」

河田が起き上がって、眉根を寄せて俯いた。
そんな表情をされるとは思わず沢北は目を丸くした。

「いいんですよ。あの時聞けなかったから逆に燃えたんで。」

実際近づいたら小さくて可愛くて…!とおどけた口調で沢北がにこにこと笑う。
先輩への気遣いだというのは分かりやすかった。





自室に戻って、沢北はベッドに座る。
なるほど、そう思われてたから冬では近づけない位俺の方もさんの方もガード固かったんだなとただ思う。

「ん……。」
携帯が鳴る。
からの連絡だった。

さん!」
こんなに連絡をとれるようになれるとは思わなかった。
そうだ、俺も、勝敗と何があったか聞かないと。
結果については深津さんも気になってるみたいだし。


『沢北さん、遅い時間にすみません。
昼間はありがとうございました。
勝敗のことを聞かれたのにお伝えしてなかったのでその報告させてください。
海南は初戦勝ちました!』

「まあ、そりゃ勝つだろうけどね。」

沢北は迷わず通話ボタンを押した。
しかしそれはすぐに切れる。
そしてから着信が来た。

さんこんばんは。」
「こんばんは!すみません着信びっくりして間違えて切っちゃいました!」
「いや想定しといてくれる?俺結構ガツガツいってると思うんすけど……。」
「がつがつ……。」

頭にクエスチョンマークが浮かんでいる姿が想像できる分かりやすい声だった。
どれだけに興味を持ってるか、深津と河田にも全く伝わって無かったのだ。
行動を見られてたと気付かずいきなり声をかけられたも似たようなものだろう。

「初戦勝利おめでとうございます。」
「はい!ありがとうございます。150点取ってくれました!」
「おお。150点。いいスタートですね。」
「はい。良い空気になってます。」

昼間とは違って、明るい声だった。

「俺はさんが何をやらかしたのかのかが気になってるけどね。」
「あ……あの、情けない話なんですけど、体調崩して私、初戦、ギャラリーで見てたんです。」
「え、大丈夫?」
「貧血になっちゃって。でももう大丈夫です。だから私の初戦は明日なんです。」
「ああだから、海南は、勝ちました、って書き方したんだ。」
「あ、察してくれてる。さすが沢北さん。」
「えへへ。」
「沢北さんにどや顔でサポートしたくてしてるって言っておきながら周囲に心配かけて何してんだろって自己嫌悪しちゃってたんです。」
「慰められた?」
「前向きになれました。ありがとうございます。」

ならよかった、と言いながら時計を見る。
明日試合ならそろそろ眠りたい時間だろう。
話を終わらせて切ろうか、と思ったところでがふふ、と笑った。

「沢北さんの声聞くとプレー見たくなっちゃうんですよね。」
「そうなの?」
「でも今日は動画見る時間はないから……雑誌にしようかな。」
「何の雑誌?」

自分の載っている雑誌は貰って本棚に揃っている。
それを見ながら尋ねたが、連絡先を交換したから気を遣って買ってくれたのだろうか。
しかし今月発売のものはない。最近受けた取材が載る雑誌は来月発売のはずだ。

「えっと……昨年12月の月刊バスケット……」
「昨年?もしかして毎月買って保存してんの?」
「はい!沢北さん大きく載って……!」

沢北も片手で雑誌を取り、ペラペラとめくる。

「ただのレイアップシュート入れたところっすよ?」
「ただの!!!???……あ、はい、レイアップシュート……」

ただのという言葉に思いっきり力を入れ、その後今気づいたかのように呟く。
その勢いの差に笑いそうになってしまった。

「え、下からの煽りで撮った写真、迫力あってかっこいいじゃないですか……。」
「……さんってもしかして俺のプレー結構好き?」

深津に聞かれたら調子に乗るなピョンと言われそうな質問を投げてしまった。

「え?好きですよ。」

否定されるか、牧さんの次に、とでも言われるかと思った答えは、シンプルなものだった。

「え!!??どうしてそんな質問……!?皆好きですよ!!沢北さんのプレー!!」
「ああ、まあそっか。評価されてるもんね、俺。」
「そうですよ!」

声は冷静に出せている。でも顔は嬉しくて笑ってしまう。

「俺もう褒められ慣れたと思ってたけどさんは別だな。嬉しー。」
言い終わってすぐにしまった!と思った。
調子乗ってるとドン引きされるだろうか。

「褒められ慣れてる!あははさすが~!」
「!」
は無邪気に笑う。

「じゃあそんな褒められ方は初めてだ!ってなってくれるような褒め言葉考えなきゃ。」
「いいってそんな。素直な感想言ってくれたらそれでいいっす。」

むしろそんな言葉言われたのが初めてだ。
ちょっと待って。

「……。」
まじでちょっとタイムアウトお願いします。

「……あ、もうこんな時間だ。明日も試合っすよね。」
「あ!ごめんなさい長々と!」
「それは大丈夫。貧血だったんしょ。さんに早く寝て欲しいかも。」
「ありがとうございます。また明日の試合結果お伝えします。沢北さんも試合始まったら教えて欲しい。」
「もちろん。また話しましょ。」
「おやすみなさい。」
「おやすみ。頑張って。」

数秒沈黙すると、の方から通話を切る。

「…………かわいいなあ……。」
ごろんとベッドに横になる。
ぎゅっと顔に力を入れて、にやけそうになるのを抑える。

「あ、ん?待てよ?」

さんとこんなに連絡取れるってことは、最初の声かけた目的を話してみてもいいだろうか。
もう少し仲良くなってからの方がいいんだろうか。

「距離感わかんねえええ……。」

いや、仲良くなってから話してそれが目的だったのか、ってなるのもよくない。
とりあえず話そう。
その時は、可愛い~ってなって話すの忘れたりしないように、俺頑張れ。

「……よし。」


『深津さん、海南勝利で150点ですって。』

もう寝ちゃったかな、と思ったが返信が来る。

『やっと聞けたのかピョン。今度は最初に聞けピョン。』

「いや、文面にピョンいらないっしょ……。」
ボソリとツッコミをしてしまった。
「……。」

『深津さんて今気になる女性いますか?』

すぐに送信。

「…………。」

どきどきしながら返事を待つ。
深津さんならなにがあっても顔に出なそうで、そのメンタルを勉強したい。

「………………。」

返事が来ない。

「あ!無視だなこれ!!??」





















早朝に目が覚めてしまったは学校に早くに着いて一人で部室にいた。

「……。」

トーナメント表を前にじっと見つめる。

「よし。」

気合を入れて、荷物の入ったボストンバッグを肩に掛けた。

「あれ?」
部室の扉が空いて、驚いた顔をして入ってきたのは神だった。

「神君おはよう。」
「おはよう。俺が一番だと思ったのに。」
「今日は元気なので!ちょっと気合入れてた!」

軽く走っていたのか、神の額には汗が滲んでいた。
私が気合をいれたところで、神君には敵わないなあと苦笑いしてしまう。
特別なことでもない限り、いつもバスケのために身体を整えている。

「俺が持つよ。」
が下げた荷物を代わりに持とうと神が手を伸ばす。
は神の手にそっと触れて断った。

「え。」
「私が持ちたいので、大丈夫。」
「え、ああ、そっか……。」

動揺した様子の神は周囲を慌てて見回す。
「あ、じゃ、じゃあ俺、これ持つね。」
「うん。ありがとー。」
テーピングの入った荷物を持ち上げて神が背を向ける。
「とりあえず運び出しちゃおうか。」
「うん。」

の前を歩きながら、神はため息をついた。
昨日はどんな話を牧さんとしたんだろう? 吹っ切れたような、また決意を固めたような雰囲気で、昨日の悲しげな様子とは全然違っていた。
また、を助けたのは牧さんだったのかな。

「はあ……。」
「あれ?どうしたの?」
「なんでもない。今日気温上がりそうだなって思って。」
「そうだね~。」

廊下の窓から外を見上げると、雲一つない快晴だった。
が嬉しそうに目を細める。

「今日は近くで応援出来る!」
「うん。やっぱいないとベンチ寂しいよ。」
「え!?本当に?」
「そー。スコア書いてる時のの真剣な表情怖いから気持ちが引き締まる。」
「そんな怖い顔してない!……と思う……。あんま笑ったりしてないけど……。」
「はは。そうだね。」

程よく力の抜けている神の表情を見て、コンディションも良さそうだと安心して笑顔になってしまう。

「ご機嫌だね。気持ちしっかり切り替わってるみたいでよかった。」
「ご機嫌?」
「にこにこしてるからさ。」
「うふふ。これは神君が調子良さそうだから喜んでる顔だよ?」
「え?」
「今日も神君は絶好調だろうな~って。嬉しい顔。」
「……。」

神がから視線を外す。
笑ってる顔が可愛いと続けて、照れさせてやろうと思ったのだが。

「俺のこと考えてる顔か。」
「うん。」
「通りで可愛いわけだ。」
「ふふ。神君のパワーは凄いよ~!」

バカップルのような会話に恥ずかしさと照れを感じて顔を互いに赤くしてしまう。
それに先に耐えられなくなった神がぷっと吹き出す。

「なにこの会話!恥ずかしいな!!」
「あはは!!ごめんごめん。でも本当に嬉しいんだよ~。」
「そんなに気にしなくても、チームに貢献してみせるって。」
「そうじゃないの。神君にもいっぱい気にかけてもらっちゃったから、感謝してるの。おかげで、また元気になれたから。そんな神君が調子良さそうだと、私も嬉しい。」

その言葉に神が立ち止まる。 それに気付いたが不思議そうな顔をして神を見上げる。

「俺、の力になれた?」
「え!?何!?改まって……。もちろんだよ!?」
「そっか。安心した。」

牧さんにちょっと追いついたみたいだ。 そう思って、神は優しく微笑んだ。










海南と湘北が体育館に入ると、大きな歓声が上がった。
すでに敗退したチームも、一般の客も来ていてすでに試合への熱気が篭っていた。
昨年の夏は緊張してたなあと、は思い出す。
騒ぎ出す清田のことは牧に任せ、はベンチ周辺の最終確認をする。 途中、湘北のベンチで同じく準備をする彩子と目が合って、手を振りあった。

も気合十分だな。」
「宮益さん。もちろんです、なんですけど、すみませんほんと……。」
「大丈夫だよ。何か必要なことがあったら言ってくれよ。」
「ありがとうございます。」
「まったく何考えてんだお前は。」
「あ。」

牧の声に振り向くと、頭に手を当てながら顔を顰める清田がベンチへ戻ってきた。
桜木と流川に宣戦布告は終わったようだ。

「大丈夫~?」
「なんのこれしき問題ないっす!!」
「そうか。すまんな清田手加減して。今度は思い切り叩いてやる。」
「ま、牧さん~~~……。」
その様子を見て高頭は笑う。

「ははは。調子良さそうだな。じゃあ始まる前に、。」
「はい。」
「みんなに一言。」
「えっ!!!???」
予想外の振りに驚愕して、監督と部員を交互に見る。
牧までの方に視線と身体を向けて、監督の言葉を待つような態度で焦ってしまう。

さんお願いシャス!!」
「喝お願いしま~す。」
「神君と清田君まで~~……。」

こんな時に良い言葉なんて浮かんでこないし、そんなキャラでもない。
湘北に知り合いがいるとはいえ、アドバイスなんて以ての外だ。
なら自分らしい言葉を言うしかないじゃないか。

「あの、怪我は、しないように……。」
「はい!!」

清田が元気に返事をしすぎるのでそれが救いだ。

「あとは……信じて、見てますから……。」

言い終わってから、これで良かったのかと変な汗が出てきた。
一瞬間が空いたあと、牧の手が頭に乗せられた。

「!」
「任せろ。」

武藤と高砂も親指を立てて笑顔を向けてくれた。
その後に清田も続く。

「やってやりますよ!!見てて下さい!」
「う、うん!」
「行ってくるよ。」
「神君も頑張って!!」

選手を見送って、このような機会をくれた監督にぺこりと頭を下げる。
が席に座ると、監督はいつもよりマネージャー席に近い位置に座った。

「?」

なんだろうと気にしつつもペンを持って備えていると、扇子を取り出して扇ぎながら口を開く。

「初戦のマネージャーのことはどうするかというのは、も自分で判断するだろうと思って、連絡して確認しようとしていたんだがな。」
「は、はい。そうだったんですか……。」
「その前に牧が来たんだ。酷く真剣な顔をしていたから何かあったのかと心配になったらお前の話で。明日はは応援席に座らせます。でも回復次第、をベンチに入れて欲しい、と。」
「!」
「私も鬼じゃないんだ。ましてや女の子に。最初からそのつもりだったが、牧が頭を下げるもんで、偉そうな口調で、分かった、と言ってしまったよ。」
「牧さんが……?」

高頭監督の方に視線を向けて驚いた顔をしてしまったが、ジャンプボールの体制が整ったところで慌ててコートに視線を戻す。

「プレイするわけでもない、ただベンチにいてスコアを書ければ誰でも、というわけにもいかんな。」
「監督……。」
「決勝だから気合も違う……と思ったが、嬉しそうなのはがいるからかもしれんな。」
「監督…………。」
「なんだ?」

絞り出すような声に、高頭がに視線を向けてぎょっとする。
ペンを持つ手が震え、唇を噛んで目を潤ませている。

「試合前にやめてください泣いてしまいます……。」
「す、すまない!」

湘北の速攻を牧が止める。 プレイを見つめながら、感謝の気持ちを心の中で呟いた。

「……しかし酷いですよ監督。湘北のことは調べてないなんて。」
「ん?」
「ビデオ渡したじゃないですか~。」
「ははは。ありがとな。ちゃんと見たよ。頭には入っとる。作戦はこれから組み立てるよ。」

翔陽戦の活躍で三井は常にチェックされている。 敵に回すと怖いが、幼馴染として高頭監督にも選手にも認められたみたいで嬉しくも感じる。
それに元々海南大付属から誘われていた選手だ。
海南大付属に行くんだろうと思っていたのに、突然湘北に行くって言い出した時は驚いたなあ。
別に同じ高校に行きたいなんて思ってはいなかったけど。
そんなことを考えてると自然と視線が三井に向いていた。
笛が鳴る。 桜木のトラベリングが取られた。
三井が近くを通った際にと目が合う。

「……。」
「…………。」

三井がいーっと、口端に指をかけて横に引っ張る。
無視をしようかと思ったが、試合中に挑発するんじゃない!と怒りが出てきてしまった。
は頬をぷくりと膨らませて、三井に向ける。

「うわあびっくりした!!可愛いな!!」
「うわ本当だびっくりしたなんですか三井さんずりィや!!幼馴染特権っスか!?」
「な、なんだお前ら……!!」

突然神と清田に絡まれてしまい驚いて視線をコートに戻す。

「けど!!さんは俺たちのマネージャーっスから!いつまでも兄貴ヅラさせませんからね!」
「なんの宣戦布告だよ!?」
「突然連れて帰っちゃったの根に持ってますからね?せっかく一緒に帰れると思ったのに。」

番犬のようにガルルルと威嚇する清田に、やんわりと説明する神の顔を交互に見て、思い出す。
たかがチームメイトと思ってそれほど気にしてなかったし、俺が支えになればいいと思っていたが、想像よりも結束は固いようだ。
のことを心から心配してくれていたのだろう。

「……悪かったな。」

ボールを追って走り出す。 パスを受けた神を、三井がマークした。

「それと試合は関係ねえけどな?」
「もちろん分かってますよ。」

本当に勝ち甲斐のある相手だな、とにやりと笑う。 冷静な振りして、勝利もも譲らねえって目をしやがって。
お互い先取点を譲らない試合展開だったが、好プレーの連続に観客は沸く。
その均衡を清田のダンクが破る。

「……。」

いつも通りのプレイが出来ている。
は淡々とスコアを付けていく。
高頭も横目でを見る。

「湘北には知り合いがいると聞いたが変わらないな。」
「はい。むしろやる気満々。」
「顔つきが凛々しいよ。」
「あ……りがとうございます?」

牧が桜木をマークする。 そこで試合が止まった。

「!」
「おい野猿!!ズルイぞてめーらOBを連れてくるとは!!」
「…………。」

桜木や清田の声、牧の様子にの動きも止まる。
そして審判の注意で場が収まり、牧の、赤木の方がフケてる宣言で状況をやっと理解する。

「……。」
「!」
がペンをぎゅっと握る。 その変化に宮益が気付いて視線を向けた瞬間、が勢いよく口を開いた。

「どういうこと桜木君!!!!!!!!!」
海南のベンチからの大声に選手も隣にいた高頭監督も審判も驚いて振り向いた。

「ぬ……!?」
一番驚いたのは桜木だった。 発言への罪悪感より、フケてると思っていなかったのか!?という疑問だった。
高頭も、いつも静かで問題を起こしたことのないの突然の大声に注意することを忘れて驚いた。

「牧さんはちょっと大人っぽいだけじゃない!!!OBって何!?」
「ちょっと……大人っぽい……?」
さんはガチで牧さんがふ……高校生の外見してないとは思ってなかったんスね……。」
「なんとなくそう思ってはいたけどね……。」

清田と神もが怒鳴るなんて珍しくてフォローせず傍観してしまった。

「おいコラァ!桜木!のこと傷つけてんじゃねーぞ!!!!」
「ミッチー!違うだろジイが老けてるのが悪いんだ!!」
「おう!そうだったな!!!牧てめえなんでそんなに老けてるんだ!!!!」
「……。」
「み、三井さん、牧さんにそんな追い打ちの方法はやめてください……。」

はっきりとした物言いで牧に迫る三井には流石に止めに入る神だった。
審判が躊躇いながらベンチに近づき、高頭が慌てて立ち上がって審判との間に入った。

「す、すみません……。」
「あの、マネージャーが真面目な子なのは分かっていますのであまり注意したくはないのですが……。」
「私から注意しますので……!」