4.沢北からの手紙



「昨日はお楽しみでしたね~。」
「あ?」
休み時間、武藤が牧の席の前に座ってにやにやと笑う。

「あ?ってこえーな!我らがマネージャーとデートどうだったんだよ!」
「デート?買い出しに行ったんだよ。感謝しろ。スプレー足しといたぞ。お前はいつでも怪我していい。」
「宮!!牧キャプテンが怖いです!!」
「からかったのは武藤だろ……。」
斜め向かいにいた宮益も呆れた声で振り返り、読んでいた本を置いて牧の席に近づいた。

「牧はおかしなことは何もしないと思うんだけど、何もしなさすぎてないか心配なんだよな。」
「今日マネージャーが落ち込んでたら問い詰めるぞ牧!」
「ふざけるな。むしろ昨日部活用の新しいシャツ買ってご機嫌だ。うきうきしてるわ。」
自信満々な牧を見て、2人ははいはいと返事をする。

「買い物して一緒に飯食って帰った。あの時間から出掛けたにしては上出来だろうが。」
「へー、も喜んだだろうね。」
「おう。ゆっくり今週の練習について話せた。」
「バスケ馬鹿!!!!」
武藤が机に突っ伏す。
色気がなさ過ぎてに同情したくなる。

「あと、洗濯機を増やして貰えるよう、交渉してみるそうだ。俺の名前を出していいと伝えた。」
もくそ真面目だよなぁ……。」






は職員室を訪れていた。
洗濯機の増設については誰に、どう申請したらいいか聞くためだった。

「あ~、洗濯機については複数の生徒から上がってるんだよ。今度利用状況調べて会議で話に出す予定ではある。うちは運動部が多いからな。」
「そうなんですか!よろしくお願いします。」

ぺこりと頭を下げて、職員室を出ようとするとすぐに呼び止められた。
さん、ちょっと。」
「はい。」

英語の女教師だった。
特に成績が悪いわけでもないが、何かあっただろうかと不安になる。
側に寄ると、ニコニコと笑いかけられた。
話は小声になる。

「これ。」
「えっ。」

渡されたのは手紙だった。
またバスケ部マネージャー、様と書いてある。
封筒を裏返せば、沢北の名前。

「えっ、先生、これ、えっ。」
「前にも来たんでしょ?学校に送ってくるなんて凄すぎるわねえ。ラブレター?私が一番に見つけたから大丈夫よ。」
「い、いや、ライバル校の方というか……。」
「先生、こういうのほっとけないの。いいから、読んであげなさい。人の気持ちは大事にしてあげなきゃ。」
「す、すみません……。読んでみます……。」

どうしよう、何の手紙だろう、連絡先教えなかったから怒ってたりしないかな、と考えを巡らせながら畳んで制服のポケットに入れて職員室を後にした。
土曜日に話題に出たばかりで、このこと知ったら破られるんじゃないかとまで想像してしまい、誰にも言わずに教室で読むことにした。

席に着くと、封を慎重に破って開ける。
中には2枚の紙が入っていた。
「……。」


さん こんにちは。 山王の沢北です。
前は学校へ手紙を送ってすみませんでした。
迷惑だろうと思ったけど、何か行動したいと、いてもたってもいられなかったんです。
そしてまたしても懲りずに送ってすみません。
まさか返事を貰えるとは思いませんでした。
返事を頂きつつ、その後音沙汰なく申し訳ありません。


そのような書き出しから始まっていた。
「ぐ、ぐう。」
「何唸ってんの?」
机に突っ伏す。
沢北の手紙が紳士で罪悪感がこみ上げる。

後ろの席にいた友人は、漫画を読むのに夢中でに一言突っ込むだけだった。
気を取り直してまた読み始める。


地獄の練習でそれどころじゃなかった……というのは言い訳ですね。
海南もインターハイ予選に向けて必死に練習していることと思います。
強豪の海南で、懸命にマネージャーをしているさんはとても素敵だったと、今でも思い出せます。


「…………。」
そしてまた突っ伏す。
なんだこの数行読んだら突っ伏す作業は。
休み時間が終わってしまう。


今年も海南と試合が出来るのを楽しみにしています。
楽しみ、なのですが、今週末、関東に遠征に行くことになって、ちょっとまた手紙を書かせて頂きました。
土曜日なので練習かなと思ったんですが、もしご都合合えば見に来てくれないかな、とおもいまして。


「えっ!」
読むのが恥ずかしいな、と思っていたが、その文章で一気にマネージャー脳になる。
山王が関東に遠征!?し、試合!?知らなかった!見たい!!


行くのは埼玉です。
場所の住所と地図を同封します。
いまいち土地勘ないんで来れるのかどうか分からないんですけど、もし良ければ来て頂けたら本当に嬉しいです。


「わっ!!!!」
ガタっと勢いよく立ち上がり、神に報告に行こうとした。

「………………。」

だが止まる。

あの山王が来るのになんで知らなかったんだ?
牧さんもそういうことがあれば言いそうなのに何も言ってなかったな。

ストンと座って冷静になる。
今週といったら体育館の点検の日だ。
休みになるかまだ決定してないけど、自主練になる可能性が高い。

「…………。」
「……、挙動不審過ぎない……?」
「そんな日もある。」
「そうですか……。」



部活中、は元気に動き回っていても、時折止まり、何か考え事をしているように見えた。

「おい、おい牧!やっぱお前がバスケの話ばっかりだったの気にしてんじゃねーのか!?私には興味ないのかなとかそんな感じじゃねぇのかあれ!」
「そ、そんなことはないだろ……洗濯機の交渉が難航してるんだろ……。」
「牧が困惑しておろおろしている!珍しい光景だ誰か写真を!!」
「武藤!!」

牧が武藤を追いまわすのを横目に、神が声をかけるもはぐらかされてしまう。

「ありゃだめだ。は結構口固いから。」
「そうなんすか……。ほんとに洗濯機なんですかねぇ?」
「セクハラされたとかならもっと死にそうな顔するから違うと思うけど。」






その頃、山王では沢北がため息をついていた。

また送ってしまった。
インターハイで会えると思っていてもだめだった。
関東という言葉に過剰反応して、会えるかもと思ったら手紙を書いてしまっていた。

「……さん……。」

昨年のインターハイで見て、ずっと気になっていた。
ライバル校の部員としてあまり良く思われてないかと思ったが、返された手紙には、あのプレイが凄かった、あのシュートには鳥肌が立ったとか、褒め言葉が沢山書いてあって、良く見ててくれたんだなと感動した。

そもそも海南のマネージャーなんてバスケが好きじゃなきゃ務まらないだろう。
話してみたい。

俺と同じ1年だったのに、何をしているんだろうと気になってしまうほど監督やキャプテン、チームメイトの懸け橋となって動いていたこの人に。

俺に足りないものを持っているかもしれないこの人に。

「沢北ぁ!!」
「はっ!!」

河田がぶん投げたボールをキャッチすると、手がジーンと痺れた。
避ければ良かった、と後悔する。

「なんですか今休憩中じゃないですか!!」
「いまいち集中できてねぇようだからな。」
「残って練習するピョン?」

深津が沢北の肩をぽんと叩く。

「しゅ、集中してますよ!!」

最近この気持ちを有効活用する術を考え出した。
さんが見ててくれてると妄想すると集中力増す!

「なんか最近お前いちいちかっこつけたプレイするべ。」
「逆にアホっぽいピョン。」
「えっ……!!」









練習が終わると、はさっさと帰ってしまった。
牧が話しかけようとしたのにも気付かずだ。

残った牧、高砂、宮益と、武藤、神、清田の3対3の試合が始まった。

「大体お前はの趣味とか知ってんのか?」
牧のマークは武藤がついた。
喋りながらもディフェンスは手を抜かない。

「よく本を読んでいるな。」
「あれ、テーピングの巻き方の本ですよ。ブックカバーで隠してますけど。」
牧の言葉に神が返す。
部活のものじゃねーか!と、武藤が声を荒げる。

「あれだけ一緒にいてそれは問題じゃないか……牧……。」
高砂は神とマッチアップしながら呆れた声を出す。

「お前ら、何か勘違いしてないか?」
フェイントを2度入れて、牧が武藤を抜く。
フォローに入った神が目の前に来た瞬間、宮益にパスを出した。
清田が高砂に意識が向いた瞬間を見逃さず、宮益がシュートを決める。

「ああっ!」
「宮益ナイス!」
「信長ごめん!」
神が読み甘かった、と清田に声をかけると、ブンブンと首を左右に振る。
「宮益さんから離れすぎました……。」
「いや俺もわり!もう少し当たり強くいくわ。」

牧と高砂は宮益とハイタッチをしてまたポジションに戻る。
神がゴール下から武藤へパスを出す。

「俺は別にに興味がないわけではない。むしろ好きだぞ。」
「俺も好きです!!」
「俺も好きですよ。」
「神と清田は何を突然張り合ってるんだ!?」

センターラインを越えると早速牧が張り付いてくる。
一瞬ドリブルを高くするとすぐに牧がスティールを狙ってくる。
わざとに決まってんだろ!と心の中で思いながら、清田にワンハンドパスを出した。
清田は素早いドリブルで宮益を抜くが、フォローに入った牧に止められる。
神にパスを出した際に高砂に取られてしまいすぐにディフェンスとオフェンスが入れ替わる。

「とりあえず牧はに連絡入れろよ~。」
「まぁ、連絡することあるから、帰ったら電話する。」
「心配しての電話だぞ?用件ついでの心配とかやめろよ?」
「おう。当たり前だろ。おっと」

高砂から牧へのパスを今度は神がカットしてすぐにロングパスを出した。

「信長!!速攻!」
「神さーーーん!!任せてください!」
「ダンク!」
「いいんすか!?」
「きーーーよーーーたーーー」
「わーーーー神さん!牧さんが来たぁ!!」
「ダンク!!」
「問答無用!?」

嫌な汗をかきながらダンクに行くが、もちろん牧に止められてしまった。
10年早い!と弾き飛ばされる。






「んんんんんん?やっぱりどこの雑誌にも無いな~。ここの雑誌とかどんだけ山王好きなのってくらい山王の特集組んだりする人いたのにな~。」
は本屋に寄ってバスケ雑誌を買い漁った。
今年の山王への周囲の期待は例年以上なのに、沢北の手紙に載っていたような情報は一切ない。

ここから推測できることというと、バスケをしに来るわけではないのか、沢北の嘘か……

「ご、極秘の遠征……?」

礼儀正しい手紙を送ってくれる人だ。
沢北さんがこんなどうしようもない嘘をつくはずがない。

「え、い、行っていいんですか沢北さん……!」
手紙に問いかけても返事はもちろんない。

「う、うむ!」
雑誌を置いて、手紙に添えられた地図を見る。
何もなくてもいい。
バスケを見れるわけじゃなくてもいい。
行こうと、すでに決めていた。

その時に電話が鳴る。
びっくりして慌てて出ると、牧の声でまた驚く。

「牧さん!?どうしたんですかこんな時間に……。」
「すまん。寝るところだったか?」
「いいえ、大丈夫です。今日はさっさと帰ってすみません……。」
「そうしたい日もあるだろ?構わないさ。はいつもよくやってくれてる。その程度で揺らぐような信頼じゃない。」
「牧さん……ありがとうございます。」

いつもより優しい牧の声色にどきどきしてしまった。
今日は時々ぼーっとしてしまったのを注意されるかと思っていた。

「今日……。」
「はい!」
「少し上の空のようだったが、大丈夫か?」
「ご、ごめんなさい!!」
「謝るな。何かあったんじゃないかって、ちょっと心配したんだ。その……昨日の買い出しで、俺が何かしちゃったんじゃないかとか……。」

牧さんはいつもやらかすじゃないですか色々!!と思ったが、口には出せない。
昨日はシャツを試着して出て行ったら、うん、胸が目立たなくていいな!と店員と喋っていて正直、やめろ!!!!!と思っていた。

「いいえ、そんなことないです。楽しかったですよ。ご一緒してくれてありがとうございます。」
「そ、そうか……。」

受話器の向こうから、牧のほっとしたような吐息が漏れる。
そんなに心配してくれてたなんて、申し訳ないことをしたが嬉しくもある。

「その、ついでに連絡もいいか?」
「はい。」
「週末の体育館の点検な、監督が別の場所とか練習試合とか検討してくれたんだが、やはり難しくてな。」
「はい。」
「翔陽なんかは藤真が凄く悩んでくれたらしいが、すでに練習試合を組んでてダメだった。」
「藤真さん相変わらず優しいですねえ。」
「そうだな。それで、自主練ってことになったよ。」
「分かりました!」

確定した。 ならばこの日の予定は決まりだ。
連休なら遠出して翌日の体調を気にせずに済む。
また地図に目を落とすと、わくわくしてきた。

「その土日どちらか、を誘っていいだろうか?」
「え?あ、その……練習のお付き合いが必要とかですか?」
「いや練習じゃなくてな。昨日、俺も楽しかったから、またと出掛けたいと思ってるんだが……。」

牧の精一杯のデートの誘いだった。
だがの頭の中はごちゃごちゃしてよく分からないことになっていた。

「埼玉ですか?」
「埼玉?」

海に行かないかと誘おうとしていた牧は意外な場所が出てきて戸惑う。

「埼玉に……行きたいのか?」
「えっ、いえ、え?埼玉……じゃ、ない……?」
「埼玉で何かあるのか?」
「さい……たま……。」

から、しまった……という声が出てしまって、牧の雰囲気が変わる。

「なんだ、言え。」
「ああああ……牧さんすみません見逃してください!!!!」
「だめだもう無理だ。言え。何しに埼玉の何処へ行くんだ。別にプライベートに口出しはしないが、人に言えないことをするようなら別だ。」
「そ、そういうことじゃないんです!」
「じゃあどういうことなんだ。」
「え、えーと、ひ、秘密の、特訓……?」
「怒るぞ。」
「牧さあん……!」
「甘えた声を出してもだめだ。おい、。」
「うええええ!!!ご、ごめんなさ……!!!!」
「あっ!」

ぶつ、と電話が切れた。
がつい電話を切ってしまった。

「や、やっちゃった……!」

明日が怖すぎる。
どうしようどうしようと思いつつ、再度牧から電話が来るようなことはなかった。









翌日、 とりあえず部活までの間に牧になんて言おうか考えなければと思い悩む。
よく考えたら友人とお出かけ、とでも言えばよかったのだ。

なんであんな態度を取ってしまったんだ。

「あ、違う、男の人と遊ぶ予定で、恥ずかしくてって言えば……。」

言いたくなくて即却下する。
自分は牧に惚れてるのになぜわざわざそんな嘘をつくのか。

「あ、でも男性と待ち合わせなのは事実だ……。」

マネージャーとして山王のバスケを見たい、可能ならばビデオを撮りたいというそれだけの気持ちなのだが。
沢北が自分にだけ教えてくれた情報なら、自分だけ行くのが良いだろうと、その理由で誰にも言いたくない。
悩んでいると、廊下のほうが騒がしくなる。
少し気になったが、その騒ぎでふと我に返り、次の時間国語じゃないか、当てられそうだと教科書を開いた。

。」
「え。」

その騒ぎの原因が現れた。
牧がの教室の入口に、ポケットに手を突っ込んで立っていた。

「ま、き、さ……」

その顔はものすごく怒っていた。
眉間に皺が寄り、やや顎が上がって見下してきている。

「昼休み、中庭。」

それだけを言い残し、すぐに来た道を戻っていった。

は力が抜け、ぱたんと国語の教科書が机に倒れる。

「えっ!?あんたなに何かしたの!?」
「牧……さ……。」
「だ、大丈夫かー??」

隣の教室から神も駆けつけてくれた。
牧が2年の教室に来るなんてほとんどないし、そもそもただ歩いてただけで注目されるような人間だ。
それが怒った様子でマネージャーを訪ねてきたとなれば、周囲はザワつき、にも注目が集まった。

「神くん……。」
「昨日電話来たんだろ?何かあったのか?」
「私が悪いんだ……腹を括ろう……。」
「いやのそういう意外と男らしいところはいいなと思うけど無理するなよ!?相手は牧さんだぞ!?」

ごめん沢北さん……と思いながら、牧に全て話すことを決めた。
チャイムが鳴って、神が心配そうにを見つめながら教室に戻っていく。
神に、大丈夫!私負けない!!と親指を立てると、神も頑張れ!と親指を立ててくれた。


そしてどきどきしながら、お昼を持って中庭に一人で向かう。
先に牧がベンチに座っていて、の姿を見ると、おお、悪いなと手招きしてくれた。
その様子に拍子抜けしてしまう。

「あれ……牧さん怒って……?」
「ないよ。なかなかの演技だったろ?」
「なんで演技なんか……!」
「お前に逃げられないように、あとギャラリーとか来ないように。」

逆に来てしまうのでは……と思ったが、思い出すと皆、触らぬ神に祟りなしといった様子だった気がする。
なるほど、牧の作戦勝ちだ。

「座れよ。」
「失礼します。」

そっと、牧の横に座る。
牧が弁当を広げだしたので、もお昼ご飯を食べる準備をする。

「昨日は悪かったな。お前にも事情があるだろうし。気になって問い詰めるような真似を。」
「いえ、私が曖昧な態度をとったので……。」
「曖昧というか不審者だったぞ。」
「すみません……!」
「それで、埼玉に行くのか?土日は。」

今度は、行きます、といえば、そうか、とだけ返ってきそうな雰囲気だった。

「あのですね、沢北さんから連絡があったんです。」

それでももう牧さんに隠し事は無理だ、と思い、口を開いた。
持ってきた手紙を、牧に見せながら説明をする。


「はあ!?山王がか!?」
「はい。」
「ちょっと待て、俺は一応バスケの試合日程は調べてるが、そんなもの見たことないぞ?山王を見逃すわけねえだろ……。試合じゃないのか?」
「あ、やっぱりそうなんですね……?」
「それか、極秘遠征……?」
「牧さん私と同じこと考えてますね!」

やはりそのどちらかなのだろう。
ならば埼玉まで行く価値は十分にありそうだ。

「なので、あの、一応ビデオ持って、行ってみようかなって。」
「…………。」

牧が沢北の手紙と地図を見ながら考え込む。

「本当に極秘の遠征なら大事だろうが……何考えてんだ沢北……。」
そして大きくため息をついた。
「……俺も行く。」
「え、いいんですか?練習は……。」
「山王の練習でも試合でも見れるなら行くさ。ただ、あまり人には言いたくないんだな?」
「沢北さんがわざわざ私にお手紙送ってくれたってこと考えると、大所帯引き連れて行くのは違うと思って……。」
「わかった。俺とで行こう。」

牧と一緒の試合観戦は、自分では気づかないところまで教えてもらえて学ぶことが多い。
嬉しくて、大きく頷いた。

「理由を聞いたら可愛いもんだな。昨日は埼玉で何するのか検討がつかなくてびっくりしたぞ。」
「ううう私こそびっくりですよ。牧さん怒らせたと思ったから……。」
「ははは。ごめんな。お詫びに何かするか?」
「あ、じゃあお弁当のおかず何か下さいよ!」
「何でもいいか?ほら。」

牧が小さいウインナーを箸で掴んでに差し出す。
あーんとそれを食べようとしたとき後方から大声がした。

「なんなんっすか!!!!!!!!!!!」

草陰から清田が飛び出してきた。

「ほ、ほんとなんなんですか!?」

神もひょっこり顔を出す。

「神くんと清田くん。」
さんが牧さん怒らせて説教って聞いたから心配して来てみれば何いちゃいちゃしてるんですか!!!!!!!!!!」
「い、いちゃいちゃなんてしていない!」
「あの、え、ちょ、二人いつからいたの!?」
「ついさっきなんだけど!!なんなんですか牧さん!!」

ならば会話は聞かれてないな、とほっと胸を撫で下ろすが、神と清田は牧に迫るのを止めない。
神と清田は牧の腕を掴んで木の影へと行ってしまった。

「しかもウインナーって……ウインナーをあーんで食べさせるってなんなんですか牧さん分かってやってないのになんなんですかそのセレクトは!!!」
「なんの話だ!?」
「ウインナーを頬張るさんとかえろいと思います!!」
「俺はそんな下心をもって選んだんじゃない!」
「だから問題なんですかね!!」

そうなのか難しいな……と牧が呟く。

「え、えーと?」
ウインナーを食べ損ねたはパンを齧った。
もうすぐ昼休みが終わってしまうのを心配しながら。