清田君と着替えに行く
バスケ部の時間は終わり、制服に着替えようと清田とは一緒に部室にいた。
「清田君学ラン似合うね~。かっこいい。」
「本当っすか!ですよね!分かってましたけどさんに言われると余計嬉しいっス!」
「あはは。ありがとう。」
は着替えを持って、部室の奥の方へ行ってしまった。
ロッカーや棚でちょうど隠れて見えないところだった。
「さん?」
「あ、ごめん。ここで着替えちゃうからこっち来ないで~。」
何してるのかなと覗こうとした清田は勢いよく後ずさりして顔を赤くする。
「わ、わ、分かりました!」
「来る途中でちらっと覗いたら更衣室すごい混んでたの~。」
清田も隅に寄って着替え始める。
「終わったら教えてくださいね!」
「うん。すぐ終わらせる。」
服の擦れる音に過剰反応してしまって困る。
音楽でもかけようかなと携帯を弄った。
「あ、なに?洋楽?」
「いっすか?ちょっと聴きたくなって。」
「うん。もちろん。」
激しいギター演奏が清田に似合っていて、カラオケ行ったらこういうの歌うのかなあと想像してしまう。
「昨年はコスプレしなかったんすかー?」
「先輩が賑やかしにやってたよ。」
「へー。そのときは何を?」
「かっこよかったよ。海賊みたいな感じでさ、俺たちに勝ったらこのお宝やるよ~みたいな演出して。」
「いいっすね!俺も着てみたいっす!」
「今年より景品豪華だったから強気のやつだったんですわ。あ、確か部室に置きっぱなしだよ。ちょっと待っててね。着替え終わった!」
「うっす!」
清田は上がシャツ、下が海南のジャージという格好になって学ランを調べた。
クリーニングに出して返すつもりだが、友人からの借り物なので汚れがついてないか気になってしまった。
「ん?」
のいる方向から、ギシギシ音がする。
「さん?」
「あったよ~。」
ひょこっと顔出しての姿を見てぎょっとする。
棚の一番上にあるダンボールを取ろうと、つま先だけ棚のわずかな隙間に引っ掛けて器用に登っていた。
「ああああ危ないっすよ!!!」
「大丈夫大丈夫……。」
「俺が取りますよ!」
「え、あ。」
軽く確認したら大丈夫そうだったので持ち上げたのだが、荷物が寄っているようでダンボールの奥のほうがずしりと重い。
清田が小走りで駆け寄る足音にも反応して振り向いてしまい、バランスを崩した。
「あ!!」
「さん!」
脚が宙に浮き、落下する。
手を掛けていたダンボールもひっくり返さえる。
咄嗟に頭だけは守ろうと手で支えようとしたが、それよりも早く腕が伸ばされる。
「!!」
「げえ!!」
ドスンという音と衝撃に目を閉じてしまったが、すぐに慌てて見開く。
「清田君!」
「大丈夫っすか……さん……。」
清田が下敷きになってを抱きしめ、痛そうに顔を歪める。
その上に段ボールと中身が降ってくる。
「ごめん!!ごめんね!!どこかぶつけた……?」
「ケツだけっすよ。大丈夫……ん?」
なにか柔らかいものが当たるなと思って、清田も目を開けると、二つの山に顔を挟まれている。
「……!!!」
これ、胸の谷間だ、と遅れて気づいて顔を真っ赤にする。
「あ、あ!!すみませ……!!ああ!!」
「!!」
退かなきゃ、と慌ててしまって、うっかり胸を鷲掴みして押し返してしまった。
「ああああああ!!!!!!」
「ご、ごめんね清田君……!」
「わ、わざとじゃないんです!!すみません!!すみません!!」
「わかってるから!大丈夫!」
あまりに柔らかくてマシュマロみたいで、こんなに触り心地良いものなのか、と一瞬考えてしまったがそんな場合じゃない。
「お、起きれませんか!?」
「ちょ、ちょっと、まって。ダンボールの中身、服?いっぱい落ちてきて……。」
手を背中に回して、少し掴んでぽいぽいと後方に投げたあと、横にコロンと転がって、清田の上から退く。
清田も顔を赤くしながらのそりと起き上がった。
「本当にお尻だけ……?頭は?背中は?」
「大丈夫っす!さんこそ大丈夫ですか?」
正直、バスケで吹っ飛ばされる衝撃のほうが上だったし一応受身もとった。
にこっと笑ってみせて、を安心させようとしたが逆に涙目になってしまった。
「ごめんね……。」
「俺頑丈なんで!やだなさんいつも部活中の俺見てくれてますでしょう!?牧さんにぶっ飛ばされんのこんなもんじゃねえっスから!」
「部活と、事故は別だよ……!清田くんに何かあったら私どう責任とったらいいか……!」
「あああさん……!」
ついにがぽろぽろと涙をこぼして泣き出してしまった。
なんて声をかけたらいいか分からなくて狼狽する。
「~~~~。」
泣いてる女の子の慰め方なんて知らなくて、とりあえず抱きしめてみる。
背中を優しく撫でて、早くが泣き止むようにと気持ちを込めた。
「俺は俺のせいでさんが泣いてるほうが嫌です……。」
「清田君優しすぎる……。」
「俺のほうが……事故とは言えセクハラのような真似を……!すみません……!」
「大丈夫。」
「……でもびっくりしました……。女の子の胸ってこんなに柔けえんスね……。女の子っていうかさんのっスかね……触ってるだけですんげえ気持い……はっ!!!!!!!!」
うっかり呟いてしまって、清田の顔色が青くなる。
嫌われる。
これは嫌われてしまうぞ、と恐怖する。
恐る恐るから身を離す。
怒った顔をしていたらまだマシ、泣いていたら校庭50周して詫びよう、と汗をかいていた。
「!!」
想像とは違って、頬を赤くして恥ずかしそうにしていた。
「き……気持いい……の……?」
「!!!」
逆に問われてしまって動揺する。
肯定しづらければ否定もしづらい。
「あ、ええと……。」
「……。」
「き、嫌いな男はいないんじゃないかな……という感じで……。」
一般論に逃げてしまった。
もちろんただの胸じゃなくて、の身体の一部だから、目のやり場に困ることはあっても嫌いになんてならないのだが。
が清田の頭に手を伸ばす。
「え?」
「……お詫び……。」
「!!」
また、ぽすんと清田の頭がの谷間に収まる。
「~~~~~!!!!!!」
「き、気持いい?あ、こういうことじゃない、かな……?どうすればいいんだろう……?」
「ちょ、さ……!」
「!!」
肩を掴まれ引き剥がされ、やっぱり違ったのかな、と思ったが、そのまま後方に押し倒される。
「さん……!!」
「清田君?」
見上げた清田の表情は切羽詰まった余裕のないもので、今まで見たことなかった顔にどきりとする。
「俺だって男なんスよ……!」
「!!」
ブラウスの襟の隙間から、清田の手が入ってきて地肌に触れられる。
留めていたボタンが引っ張られて、プチ、と糸が切れそうな音がした。
「うう……!」
歯をギリ、と噛み締めて、辛そうな顔をして、の胸元に顔を寄せる。
鎖骨に唇が触れるとすぐに清田が離れる。
「すみません!俺は堪え性がないくせに臆病だ!!中途半端で最悪っす!」
「き、清田君……!」
「さんのこと大好きなんす!大好きだからビビっちゃうんすよ!察してくださいよもーーーー!!!!!」
むきいいいいといつもの清田のテンションに戻って、騒ぎ出す。
も起き上がって、乱れた胸元を直す。
「ご、ごめん……。」
「ううう……。でも正直ほんと……気持ちよくて触りたくなっちゃうからやめてくださいこういうの……本当に……。俺はさんを守る側でいたいんス……。」
「!」
清田の優しい言葉に嬉しくなってしまう。
「清田君可愛い。」
「ガキ扱いしないでください!」
「ごめん……!」
「誰が来るかわかんないっすよ部室!早くこの散らかったの片付けましょ!」
「はーい。」
清田が床に散った衣装やタオルを畳んでダンボールに入れ、畳んでダンボールに入れの作業に取り掛かる。
「衣装着たいんじゃなかったの?」
「それどころじゃないっす!片付けるほうが先ですよ!」
「は、はい……。」
どっちが先輩で後輩なんだか分からなくなってしまって、はくすくす笑ってしまった。