逆トリップ編 第3話



大学に来ると、すぐにスポーツが好きな友達に剣道場について聞いてみる。
検索はしたのだが、距離の近いところとなると会員制のジムや区の体育館しか見当たらない。
ぜいたくを言えばもう少し目立たないところを紹介したい。

「大学のはだめなの?」
「うん。ちょっとね……。」
「というか、あんた知らないの?」
「へ?」
、高校のときに剣道で全国大会でいいところまでいってたんでしょ?あいつのが詳しいって!!」
「え!?本当!?」
「ちょ、あんた、知らなかったの!?仲いいくせに!!」
「だって、そんなこと一言も……。」
「あんたから聞きにいけ!!だからあんた彼氏できないんだよ~。」
「お、大きなお世話だ!!教えてくれてありがと!!」

友達に手を振りながら、歩き出す。
今日は同じ講義をとっているから話す機会はあるはずだ。

「いよっ!おはよ!!!!」
「わ!!おはよ!!」
教室に入ろうとしたところで、が声をかけてきた。
講義が始まるまで時間があるし、そのままの流れでと一緒に受けることになった。

「ねえ、さっき聞いたんだけど、剣道凄いんでしょ?」
「え、何俺の噂!?なんか恥ずかしいんだけど!?あ~、まあ、少しは、な……。」
席について、講義の準備をしながら話し出す。

「今もやってるの?部活とかサークル入ってるとかは聞かないけど……。」
「少しだけ。剣道ってよりは体力づくりだけど。」
「そうなんだ……。」
少し元気が無くなった様子に、聞いちゃいけないことだったのかなと不安になる。
しかしすぐにまた人懐こい笑顔を見せる。

「俺のじいちゃんの家、小さい道場やっててさ。趣味が高じてってやつだけど。」
「!!」
「俺もたまに、小学生に教えに行ったりしてる。興味あるの?」
「ある!!それって、私たちくらいの人って、行っても良い所?」
「ああ、もちろん。でも、ちゃんとした教室じゃねえよ?かなりテキトーな所だけど……やるんなら土曜……明後日見に来ないか?雰囲気見てからのがいいだろ?結構ボロいしさ。」
「場所は実家?」
「いや。実家と大学の真ん中くらいだけど。の家からでも歩いて行けると思うぜ?でも明後日はそんな心配不要。俺が迎えに行く。」
「あ、ありがと!!あの、他に二人いるんだけど……良い?」
「いいぜ!賑やかになって良い!!」

こんなに早く話がまとまるとは嬉しい誤算だった。
うっかり彼の手を握って喜びそうになって自分を抑える。
戦国だと言葉がちゃんと伝わっているか自信が無くてついついスキンシップ過剰になってしまうが、ここでやったらおかしな目で見られてしまう自信がある。

「じゃあ約束な!!」
「うん!!」

早く家に帰って二人に教えてあげたくて、その日は一日そわそわしてしまった。







「というわけで!明後日は車に乗れるし道場にもいけます!!」
帰ってきたら、二人は大人しくテレビを見ていた。
人が一人死んだらこんなに騒ぐのかと、ニュースを見ながら呟いていた。

夕食のときに二人に嬉々として報告する。
今日は昨夜の残りの筑前煮と、ほうれん草のおひたしとサバの味噌煮だ。

しかし話を聞いても、政宗と幸村は素直に喜ばない。

「ふうん……その、?信用できるのか?」
「私騙しても何の得も無いしね……大丈夫、心配しなくて!!」
「俺たちはあの格好で行って良いのか?」
幸村が壁にかかった洋服を指差した。

「うん。とりあえず見学だけになるかもしれないけど、相当な事が無い限り、そこで我慢してくれないかな……?」
「もちろんそのつもりだ。」
「ありがと!!」

のじいちゃんなんだ。
きっと優しいぞ!!
頼み込んで、使用料金は一回一回支払わせてくれないかな、と考えだす。

「……。」
「え?何?」
政宗が眉根を寄せる。

心配事があるのだろうか?

「そいつは……男か?」
「誰が?」
「……。」
「うん。なんで?女のが良かった?」
「……ある意味な」
「な、え!だだだだめだめ!!紹介しないからね!!女遊びはだめ!!」
「おまっ……!!どんな目で俺を見てんだよ!!違う!!」

政宗さんが心外だとテーブルをばんばん叩いた。

「……あの、、仲がよろしいようだが……その男はその、どういった関係で……?」
続けて幸村がおどおどした様子で問いかる。

「え?友達って最初に言わなかった?」
「ほ、本当に?」
「うん。」
「な、なら、良かった……。」

ふう、と幸村さんが胸を撫で下ろした。
どうしたの?と声をかけようと思ったところで視線を感じて窓を見る。

~。』
「おや、爺さん。」
お札を剥がして中に招き入れる。

「氏政か?」
「うん。」
「不思議でござるなあ……俺には見えぬのに……っだあ!!」
政宗が幸村の頭を叩いた。
気を遣ってくれたのだろうが、思わず笑ってしまった。

「気にして無いよ。幸村さんは素直な事を言ってるだけだもの。」
「……べ、別に、俺は。」
「え、あ、いや!!某はその……。」
「だから大丈夫だって。」
口を尖らせる政宗に、慌てふためく幸村が可愛らしく感じる。

、全然だめじゃあ……何も反応が無い……。』
「そっか……。」
『以前はワシの城へ行って、次は農村じゃったな?ううむ……規則性があるのかは判らんが……。』
今日の昼間に大学に爺さんが来たので、とりあえず大まかな説明はしていた。

「慶次はね、今度来るときは行きたいところを想い描いて来いって言ってた。それじゃだめかなあ?」
『ううむ……まあ、試す価値はあるかの……。』
「……どこに行きたいと想えばいい?」
聞いていた二人はの話だけで大体の会話を把握したようだ。
政宗が難しそうな顔をした。

「別な場所は考えないほうがいいだろう?」
「一緒が良いでござるな……。」
「……慶次のところ、じゃだめ?」

一番に慶次に会いに行きたい。

「……前田、は、なあ……。」
「あの後、そのまま明智殿が手当てをしているかもしれぬなあ……。」
「き、危険だ……。」
二人が一層難しい顔をした。

「佐助のところ、ではだめか?」
「小太郎ちゃんは一緒かな?」
「それはねえな。あいつも忍だ。猿は信玄に、小太郎は小十郎に報告にいくだろう。」
「そっか……。」

うーん、と腕を組んで考える。
「でもまだ時間あるし……そのうち何か浮かぶかもね!!ゆっくり考えよう!!」
「それもそうだな。」
「うむ!!」

とりあえず夕食を済ませて、が食器を洗う。
その間の二人の会話は全く聞こえなかった。


「幸村、出陣だ。」
「……俺も同じ事を考えていた。」

聞こえたとしても意味は判らなかっただろう。








いつも通り朝を迎えて、玄関先でいってきますと声をかける。
返事は少々慌しい声が返ってきた。

「?」

何をやっているのだろうか?
帰ってきたら家が壊れていない事を祈って外に出る。

「あ~……そろそろレポートとかでそうだなあ……。」

集中できるだろうかと憂鬱になりながら大学に向かう。
後方には特に気を配っていなかった。






「政宗殿……あ、いや、ま、まさむ……ね。」
「言いにくいなら伊達で良い。」
「う、うむ、伊達、ここに、、入っていったな……。」
「ああ……。」
「で、ででででかいで、ござる……。」

二人は門の前で大学を仰ぎ見た。
ちゃっかり後方からついて来ていた。

「見失ったら厄介だ。驚いてねえでさっさと行く……。」
「あ、ああ……って、あれ?」

を早速見失った。
人が多すぎる。

「参ったな……。帰り道は覚えているが。」
「あの建物に入っていったのは確か……行く、でござるか?」
「慌てんな、ござるを取れ。」
「す、すまぬ……行く、か?」
「行くぜ……。」

政宗が一歩踏み出す。
幸村もそれに続く。

自動ドアの手前まで来ると
「伊達!!」
幸村が政宗にしがみついて止めた。

「なんだよ!?こんなの買い物の時通ったじゃねえか!!近づきゃあ開く……。」
「ここは、あのような公の場であるか!?な、何か手形が必要で、それを持っていなかったら入れないとか……。」
「……。」
「持ってなければ、攻撃される、とか……。」
「……。」

二人は動けなくなった。


しばしそのままでいると、一人の男に声を掛けられる。

「……あ?お二人さん、そんなとこに立ってたら邪魔だよ?」
「!!」

無礼極まりない口調だが仕方が無い。
は時々無礼になるが、この男よりはもう少し丁寧な印象がある。
しかしテレビでこのような喋り方をする人間はたくさん見た。
心を落ち着けて、詫びを入れる。

「すまない……。」
端に寄って大人しく道を譲った。

「……あれ?」
通り過ぎようとした男は二人をジロジロと見る。

「……んだよ……。」

なにかおかしいところがあったのだろうか。
不安になりながら、政宗は目の前の男を睨みつけた。

「え、ちょっとちょっと、そんな熱いまなざし向けないでくれる?惚れちゃったらどうするの?」
「……。」

喧嘩は避けたいが返ってきた反応になんとも軽々しい男だ……、という印象を受ける。
しかし笑顔は優しく、折角だからいろいろと聞いてみるか?と思うには十分だった。

そう考え、口を開こうとすると

「あんたら、の従兄弟さん?」

思いがけない言葉だった。

「……?」
の、姓だな。」
いつも名前で呼んでいるから、一瞬判らなかった。
「……従兄弟ってことにしてんのか……。」
ぼそぼそと二人で呟く。

「おい?俺は怪しくないよ~?」
何かひそひそ話を始めてしまった二人に男は苦笑いした。

「……なぜ、分かった?」
幸村が警戒をしながら尋ねた。

「服。それ、俺と一緒に買いに行ったんで。」

その一言に、二人の口元がぴくりと引きつった。
そもそも政宗と幸村のことを嘘でも話すような相手だ。
にとって、この男はどういう存在なんだ。

「で、に会いに来たの?」
「ああ……どこにいるか、分かるか?」
「ん~、講義選択だからなあ……。」

荷物から”すまーとふぉん”を取りだした。
弄った後に顔の横に当てた。

「おう、おはよう、。」
「「!!」」

と、話しているのか?
時々が弄っていたり、急に音が鳴り出す所は見たが、このような使い方ははじめて見た。

「今どこに居る?……は?購買?お前、朝っぱらから……はは!何がチョコ中毒だ!!」

楽しそうに会話する男に嫉妬する。
は、こちらに居る時は、この男が傍に居るんだ。

「安心しろよ!!お前がどんなにぶよぶよになっても友達で居てやるからな~!!……嫌とか言うなこら!!」

……友達
本当に?

男が顔からすまーとふぉんを離し、タッ、と画面を一押しし、
にこりとこちらを向いて、

「ごめん、用は何だったっけ?」

初対面だがそんなことは気にすることなく二人は目の前の男をど突いた。















改めて連絡をとってもらい、が居るらしい部屋に案内してもらった。

「ここ、ええと……ああ、あれ、居るじゃん、窓際の席。」

案内してくれた男は指を差しての居場所まで教えてくれた。
が、友達らしき人間と仲良く喋っている。
周りは全て女だった。
これはこれで話しかけにくい。

「礼を言う。」
男に向き直って、政宗がそう言った。

「……い、いえいえ。なんだ、外見によらず礼儀正しいっすね。」
「おう、育ちがいいからな。」
「はは!!そりゃあいいや!!」

未来の人間といってもそれほど変わりはないのだと感じた。
むしろ、敵意も何も持っていないから、接しやすい方かも知れない。
明日、今日話をした人間に刀を向けられるかも知れないという危機感は全く無いのだろう。

「お主の、名前を聞いても宜しいか?」
「……あんた、歴史オタク?」
「……おたく?」
「あ、ああ、失礼、気にすんな。俺は。」
「「!!」」

お前が、お主がそうだったのか、と政宗と幸村は声に出さずに驚く。
今日ここへ来た目的はすでに達成されていたのだと知る。

二人はの素行調査に来たのでも、驚かせようと大学に忍び込んだわけでもない。
の口から出た名の男を見に来た。
ろくでもない男だったら、それなりの対処をしてやろうと考えていた。

「お二人さんは?」
「……伊達だ。」
「さ、真田。」
「伊達に、真田ね。縁があるかどうかわかんないけど、まあよろしく。」

下の名までは聞いてこない。
二人は密かに安堵した。

「んじゃ、俺はここで。」
軽く手を上げて、が階段のある方向へ歩みを進める。

「え、あの、に、会いはしないのか?」

予想外だった。
仲が良い所を見せ付けられるかと思っていた。

「俺は真面目なので。次の講義始まっちまう。によろしく~。」
「は、はあ……。」

呆気なく去っていってしまった。
幸村は拍子抜け。
政宗は微妙な顔をしていた。

「余裕のあることで。明日、が居なくなっちまうかもしれないとか、そんな心配はねえんだな……。」
「そうかもしれぬ……が、うむ、それなりに、良い奴でござった。」
「見た限りではな……。」

がしゃん!!

「!?」
「何事!?」
音がしたのはの居る部屋の中から。
敵襲かと、中に踏み込んだ。
まず目に飛び込んだのは、絶句しているだった。
口をぱくぱくさせている。

「……そんなに驚くもんか?」

の後ろに何かが落ちている。
が氏政へ文を書くのに使っていた筆だ。散乱している。
先ほどの音はあれを落としたものだったのだろう。

「な、ななななな何してんの……?」
「え、……知り合い……?」
「かっこい……ちょ、紹介してよ……。」

周りの女は色めきたった目でこちらを見ている。

「Don't Worry……その、俺たちはな……。」
「すまない……。あの、迷惑かけるつもりでは……。」

が出していた荷物を片付け始めた。
「え……?」
「腹痛!!」

そういって元気よくこちらに走ってきた。
女友達は驚いた様子でに向かって叫ぶ。

「ちょっと!サボり?」
「頭痛‼腰痛‼」
「そんな一気に⁉」
「関節痛‼」
「いや嘘分かりやすっっ‼‼」

かばんを肩にかけて、二人の腕を掴んで教室を飛び出した。
階段を駆け上がり、誰も居ない小さな教室に入った。

「……ぜーはー……。」
息を切らしているのはだけだ。

「す、すまない、、あの、邪魔する気ではなく……。」
机に両手をついて俯いて息を整えるの表情は見えない。

「よ、よく来れたね……。」
「後ろ、つけてたからな。」
「気がつかなかった……。」

が顔を上げると、口を結んで、困っているような顔をしていた。
「悪かったよ……勝手に来てよ……。」
政宗も素直に謝った。

判っている
は怒っていない

俺たちのことが心配なだけだ

「子をはじめてのおつかいに出す母親って、こんな気持ちなのかな……。」
「??」
「何で居場所……あ?さっきの……。に会ったの?」
「ああ、服で分かったらしくて、案内してくれた。」
「そっか、うああ、もう、ちゃんと来れてよかったなあ!!偉い偉い!!」

は二人の腕に自分の腕を絡ませて引き寄せた。

「な、んだよ……お前は!!過保護!!」
「はは、未来では立場逆転だな、政宗ど……伊達。」
「うっせえな!ある意味小十郎二号だ!」
「光栄です!!」

離れると、今度はは笑っていた。

「んじゃあ一日大学生体験する?」
「だい、がくせい。」
幸村がゆっくりと反芻した。

「そう、ここで、学問を学ぶの。」
「ふうん、手ぶらだが大丈夫なのか?」
「問題ないよ。次は運動学だから、少しは興味あるかも……?」
「運動学?」
「骨とか、筋肉とか、神経とか力学とか……。」
「よく判らぬが、と一緒なら、俺はやってみる。」

幸村が拳を握り、やる気を見せた。
「あはは!教えてもらう立場だから、気軽に受ければいいよ。」
「そ、そうなのか?」
「……侵入して、平気なのか?」
「政宗さんは疑い深いなあ。大丈夫だよ!!」

二人の肩をぽんぽんと叩いた。
後ろの方でこっそり受ければ問題ない。
友達に見つかったら面倒な事になりそうだからそちらの方を気を付けないと。

……この二人、顔が良いからよ……。




というわけで、次の時間は教室にこっそり入って、途中で二人は寝ちゃうかもなあ、と軽く考えてたんですがね

「なるほど……。」
「運動と感覚を司る神経がそれぞれあって……脳とつながって……。」
「え、ええ、はい……。」
「このような解剖図は初めて見る……。」
「……ふうん……中枢神経……やはり背骨の……脊髄?ここを折るのがいいのかね……?」
「ぶ、物騒な理解の仕方しないで!!」
「それより伊達、肩は思っていたよりも複雑な運動をしておる。鎖骨を折ることでも腕には……」
「真田までー!!?」

変な興味を持ってしまった……。





お昼はラウンジの隅っこで三人で食べる。
一日三食の習慣には慣れていない政宗と幸村は簡単に、飲み物とサラダを食べていた。

ダイエット中のOLのようだと思ったのは秘密です。
一番食べる量が多いのが自分というのは複雑だと思いながら、購買で買ったおにぎりを食べる。

「だいがくってのはなかなか面白いところだな。」
「へえ、そう感じてくれるなら嬉しい!」
「うむ、活気に満ちている。衛生状態もよく、環境が整っていて、勉学に適しているな。」
「……真田が真面目なことを言っている……。」
「俺だってこの程度言いますぞ!?」

名字呼びにはまだ慣れない。

「……そうだなー。」

二人はやはり色々なことに興味津々で、それを満たしてあげるのに自分一人では力不足だ。

「図書館を案内するね。」
「としょかん。」
幸村がオウム返しで反応するのが可愛い。

「色んな専門的な書籍、無料で貸してくれるので、何知りたいか考えといて。帰る前に寄るので。」
「例えば?」
「あ、えっと。」

政宗に問われてはっとする。
漠然とした言葉過ぎたか。難しい。

「政の仕組みとか、カラクリのこととか、お洋服でもいいし。人の身体については私結構もってるからそれ以外がいいかな。」
が腕時計を見る。
「……結構滞在できると思うから、行ってから決めてもいいし。」
「わかった。なら俺は政だ。」
「ん。」

即決する政宗がかっこいいと思ってしまうのは仕方ないと思う。
そして政といっても範囲が広いから早めに図書館に行った方がいいだろう。

「ならば俺もそうしましょう。お館様にご助言できる知恵がつけばこれほど喜ばしいことはありませぬ。」
「真田も。了解しました~。」

二人とも国や民を背負ってるんだもんな、と改めて尊敬する。
同じくらいの年齢の私たちはまだ人生の岐路にいるのに。




図書館で本を物色し、政宗は政治の基礎や保険制度の本を手に取った。
幸村は悩んで、政宗とはまた違う基本の本と学校教育に関する本を選んだ。

借りて帰路につくと、政宗は言いずらそうにに話しかけた。

「……。本……漢字の読みと意味を結構聞くかもしれねえ。」
「いいよ~。」
「お優しい……!あ……。」

幸村がふと、書店の前で立ち止まる。
政宗も同じ方向を見て動きが止まった。

「……。」
「ファッション……お洋服の本?」
「Ah-……まあ……。」
「興味はあります……しかしあれも図書館?」
「あれは売り物だよ。あ、そうだね。違い、分かる?」
「まあなんとなくな。しかし買い物はまだ怖えな……。一見じゃ何屋かさっぱりわからねえものもあってよ。」
「買いたいものあったら遠慮なく言ってね。高いのは無理だけど……。一冊買ってこようか。お洋服の本。」
「いいのか?」
「うん、もちろん!私も一冊買おうかな。」
「男女で分かれてるのか。なるほど、それもそうか。」
「かたじけない……!」

ファッション誌を二冊買うと、幸村が荷物を持ってくれる。
色々買わせて申し訳ないと言われてしまったが、はそれより二人が興味を持ってくれることが嬉しかった。
政治だけでなく、年相応だと現代で感じるものに。